検索窓
今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:17,949 hit

第五十話 貴方を記憶から呼び戻す ページ1

必死に動かしていた足が制止する。

無口な女が見つめる先にあるのは、揺れる銀髪の髪と舞い散る桜の花弁。
じわりと視界が歪む。





”「よおっ!ナナシ」”
”「...この銀時様から一本とってみろ!」”

”「...ほら俺の教科書みてもいいぞ」”





銀髪の少年と初めて出会った寺子屋の出来事。
その景色が切り取られ、今見ている景色に当てはめられる。

舞い散る桜も、揺れる銀髪も、髪に乗った花弁も。



『...ぁ』


口から漏れ出た声は、喜びか悲しみか。
ぐるぐる頭の中が廻る、それでいてまるで時が止まっているような感覚だ。

記憶の奥の奥に、頑丈な箱に南京錠を掛けて閉じ込めていた。
無意識にこじ開けられ、思い知らされる。

今までずっと、私の隣には...あの銀時がいたことを。






「...おい?...A」


後ろを歩いていた女の様子がおかしくなったのは、すぐに勘づいた。
振り向き存在を確認するも、その尋常じゃない雰囲気に探るように声を掛ける。

まるで聞こえていないようだ。
声を掛けても反応がまったくない、目を見開き、自分を捕らえている。



『...っ』



ぷつりと何かが切れたように、いきなり脱力した細い体。
反射的に動いた銀時は、そのしなやかな体を抱き留める。

彼女に一体何が起こったのか皆目見当もつかない。

体調が悪そうなのは確かなのだが。




『...ッは』



力ない体を抱き起こす。
ふいに顔を上げた女は、至近距離にある男の顔に声を詰まらせた。
触れあっている場所は熱を持ち汗ばんでいて、女の顔は赤く色づき瞳には涙を滲ませている。



「...お前」





「...――――ぎゃああぁ、ぁっ...ぁ....」




銀時が何かを言いかけたその時。
そう遠くない距離で響いた、女の悲鳴。

続いて聞こえた、生々しい音。




「っ!?...っ」



音のする方へすぐさま視線を移す。
桜並木の隙間から覗く、飛び散った濃い赤と佇む一人の男。

唐笠を深くかぶり、手には血の滴る刀。



『...っ!?』

「...行くぞっ...!」



腰を抱いていた男の手は、女の白い手首に移り引っ張る。
ぐんと力強い勢いで手を引かれ、その速さに付いていこうと必死に足を動かした。

二人分の足音は消せない。


背で後ろから迫りくる殺気を感じた銀時。
頬には冷や汗が垂れた。

第五十一話 君の身を最優先に→



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (65 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
178人がお気に入り
設定タグ:銀魂 , 坂田銀時 , 銀魂小説   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

白桜姫 - 続き無いんでしょうか? (2018年11月16日 2時) (レス) id: d2ccbb161c (このIDを非表示/違反報告)
幸村時雨(プロフ) - 夏希さん» コメントありがとうございます!応援、とても励みになります^^更新頑張りますので、これからもよろしくお願い致します。 (2018年4月4日 22時) (レス) id: 7a07976017 (このIDを非表示/違反報告)
夏希 - 面白いです!頑張ってください!更新楽しみにしてます! (2018年4月2日 21時) (レス) id: 7d93fff421 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:幸村時雨 | 作成日時:2018年3月25日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。