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ページ42

───どうして、私はこの世界にいるんだろう。

 世界中で人が話している『共通言語』、それは私の生まれ育った国の言葉だ。どうしてそれがこの世界で使われているのか。

 それが、気味が悪くて堪らなかった──────


「、……琥珀? 大丈夫?」

「───えっ、ごめん、何」

 肩を揺さぶられて、やっと我に返る。ユナンは心配そうな顔をしていた。

「ごめんね、変な話しちゃって」

「そ、そんな、話振ったのは私だし……」

 そうだ、ここまで話が広がったのも、元はと言えば私が変なことをユナンに聞いたからだ。一人で猛省していると、ユナンはお茶を淹れ直しつつ、口を開いた。

「ううん、話を広げたのは僕だ。……この世界のことはともかく、琥珀が『共通言語』を話せるのは、聖宮の()が何かしてくれたって線もあるんじゃないかな。君がそんなに考え込む必要はないよ」

 暖かいお茶が目の前に置かれる。両手で包み込むように持ち上げれば、掌にじわりと熱が伝わる。口をつければ、優しい甘さが広がった。

「……でも、琥珀の話は、正直驚いた。
 僕たちはたった一つの言葉を持って生まれた。けれど琥珀のいた世界では、何千という言語が存在していて、国が違えば全く違う言葉を喋っていた───うん。すごく衝撃的だった」

「そうなんだ……」

 常識が違えば、こうも驚くものらしい。私からすれば、世界中の人達が同じ言葉を喋っているのが驚きだ。それだったら、海外旅行もだいぶ楽になるのではないだろうか。……そういえば、なぜ『トランの民』と呼ばれる人たちだけ、扱う言葉が違うのだろうか。

「ユナン、なんで『トランの民』だけ言葉が違うの?」

「うーん、どうだろう。それは僕にも分からない」

 なるほど、ユナンが分からなければ、私に分かるはずもない。
 考えるのは諦め、湯気のたつお茶を啜った。

 ───この世界に、神はいるのだろうか。

 揺れる水面に映る顔。
 それは私の記憶にある自分の顔と、全く同じだった。もう少し美人に、いや可愛くしてくれても、と思ったことはあるのだが、そう文句が言える立場でもない。

 魔法があるってんだから、多分神もそこらへんにいるかもしれない。
 神なんてものがいれば───私も、少しは、変われるだろうか。







第392夜 理由→←〃



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名無しさん(プロフ) - 藍茶さん» 藍茶さん初めまして、ご感想ありがとうございます!返信が遅くなってしまってすみません。この状況下なので私生活でも色々あったのですが、できるだけ更新ペースも元に戻していきたいとは思います。よろしくお願いします (2020年6月4日 16時) (レス) id: 8c887b66b4 (このIDを非表示/違反報告)
藍茶(プロフ) - 最近読み始めました。めっちゃ面白いです!更新待ってます(*´ `*) (2020年5月10日 1時) (レス) id: cd49a05e5e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:名無しさん | 作成日時:2020年3月4日 21時

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