〃 ページ18
「───、───」
あまりにも暇すぎて、気付けば何かを口ずさんでいた。
それが何なのかも分からず、ただ本能に従うみたいに、喉を震わせていた。
気付けば、ウーゴとアラジンがこっちを見ていた。
「ごめん。……うるさかったかな」
一言謝るが、アラジンは表情を変えない。ウーゴは驚いたような顔をしていたが、アラジンの前だからかあまり表情を崩さずに、少しだけ微笑んで手を軽く振った。
「それ、なに」
アラジンの表情は変わらない。それは表情に乏しい、というより、他の感情を知らないみたいだった。
だが、『なんだ』と聞かれて、これまた何と答えればいいのか分からなかった。とりあえずは、頭の中に浮かんだ単語を口に出してみた。
「……歌？」
質問に疑問系で返してしまった。
「『うた』って、なんだい」
「…………ええと」
そして追いつめられる。頭を悩ませていると、ウーゴが機械みたいに助け船を出してくれた。
「『歌』とは、旋律に言葉を乗せて発声する娯楽、芸術のひとつです」
顔の前に手を持ってきて『ありがとう』と声に出さず伝える。私にも分からないけど、多分その説明は完璧だ。
「ふうん」
そう言って、またアラジンは本に視線を戻した。
邪魔になっちゃったかも、静かにしなきゃな、と自分の中で反省会を行おうとした直後、アラジンはすぐに顔を上げて、言った。
「それ、続きは」
「え？」
「続き。あるの？」
「……ええと」
これまたぶっきらぼうに。
あるには……多分、あるのだが。
人に聞かせるとなると、えらく緊張してしまう。でもアラジンの瞳は次を催促しているように見えて、私を貫く視線がとても痛い。そして辛い。
「………………ん、ん」
わざとらしくひとつ咳払いをして、さっきのところを繰り返す。
頭に歌詞は浮かばなくとも、口に出してみれば不思議と次が出てくる。
これは多分、雪と別れを歌った唄だ。
痛くて悲しいのに、その先には淡く光の灯る未来というものが、あるような気がした。
アラジンもウーゴも、何も言わずに、ただそれを聞いていた。
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名無しさん(プロフ) - 藍茶さん» 藍茶さん初めまして、ご感想ありがとうございます！返信が遅くなってしまってすみません。この状況下なので私生活でも色々あったのですが、できるだけ更新ペースも元に戻していきたいとは思います。よろしくお願いします (2020年6月4日 16時) (
レス) id: 8c887b66b4 (このIDを非表示/違反報告)
藍茶(プロフ) - 最近読み始めました。めっちゃ面白いです！更新待ってます(*´ `*) (2020年5月10日 1時) (レス) id: cd49a05e5e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：名無しさん | 作成日時：2020年3月4日 21時
