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絨毯の上から地上を見下ろす。
一夜明けても尚、シンドバッドへの歓声は静まっていなかった。皆心の底から嬉しそうに、『シンドバッド様と共に』と繰り返していた。
「……誰にも望まれていなくても。必ず取り戻すよ。みんなの本当の心を……」
その光景を眺めながら、アリババは小さな声で、彼らへと呟いた。
本当に、この世界でそれを望んでいるのは自分たちだけだと痛感する。
そう。たった、二人だけの戦い──────
「何勝手に黄昏れてんだよ?」
聞き覚えのある声。
ビイ、と鳴く黒いルフ。
「────!?」
二人の乗る絨毯へ、突如現れた転送魔法陣から降ってきた。
「は、白龍ッ!?」
「ジュダルくん!?」
「黒いルフは『大いなる流れ』のはみ出しものらしい。俺も、一度堕転して規格から外れてしまったようですね」
「な〜? 堕転しといてよかっただろ?
おい、この気持ち悪ィ世界をぶち壊すんだろ!? 俺たち抜きでは行かせないぜ!」
不安を払拭する黒。
どうしてか、嫌なほどに自信がどこからか湧いて出てきた。可笑しくて、アリババはつい笑みを零す。
「……はははっ!」
「よかったね、僕たちだけじゃなかったよ!」
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作者名:名無しさん | 作成日時:2019年11月3日 19時