第193夜 裏切りのマギ ページ13
「こいつ、でかくなったぞ！？」
肩で息をしたまま、アリババは驚きを隠し切れずに声を荒げる。
「海からルフを奪ったんだ！ あいつは、この世界のあらゆるものからルフを奪って強くなれるんだっ！！」
さらに大きさと威圧感を増した『依り代』を、魔装戦士たちはただ見上げることしかできない。
「……そんなのに」
紅覇が力なく呟く。
「そんなのに、勝てるのかよ……！？ 僕らはもう極大魔法も撃てない、『魔装』も、ギリギリだ！」
皆の持つ金属器の八芒星も点滅を早め、魔装も切れかかっていた。目からぼたぼたと垂れる血を拭うことさえできない。それでもアラジンは諦めなかった。
「勝てるはずだ……『アルマトラン』の時みたいに、今度も、きっと。
『アルマトラン』でも同じことが起きたんだ。今の『依り代』とは形が全然違ってたけど、なぜだろう？
とにかく、その時はソロモン王と、『ジン』になった72人の『眷属』たちが『依り代』を次々とやっつけたんだ」
『眷属』が『ジンになる』その言い方にアリババは疑問を覚えながらも、今は到底聞ける雰囲気でもなかった。
「だからここにいるみんなが力を合わせれば、きっとまたあいつを倒せるはずさ！」
だが、『依り代』は反撃を許さない。
その巨躯は勢いをつけて振りかぶり、剥き出しになった海底へと白瑛を叩き付けた。間一髪のところでアラジンが間に割って入り、防御魔法で守るものの、二人のダメージはとてつもないものだった。
そのうなじに水が突き刺さる。
「海上で誰かに遅れをとっては、
そのまま抉るように刃を突き進める。───それも、もう効かない。
『防壁』なしでも、水の刃ではもう太刀打ちできなかった。彼女の張り裂けそうな雄叫びごと、触手の中に消え去った。
「これ以上身内を殺されてたまるかっ！！」
残り滓となった魔力を総動員し、紅覇はその腕を斬り落とす。
それ故に、自分に迫り来る手には気付かなかった。
「紅玉、紅覇！！」
紅炎が握り込まれた紅覇を救出した頃には、もう彼の意識はなかった。矮躯は血だまりの上に力なく放り出され、ぴくりとも動かない。紅玉も両足を負傷し、引き摺って這いつくばるのが精一杯だった。
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作者名：名無しさん | 作成日時：2019年7月9日 0時
