黒猫は幸せを届けたい (ページ5)

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5個目ページ5

上から降ってきたのは深い緑色のパーカーを着た男の人で、ゾムと言うらしい。

そしてそのゾムさん曰く、生き延びるとは思わなかった。って事はとても危ない状況だったのでは……？
驚きの事実にガタガタと震えていると、それに気付いたのかお兄さんがそっと撫でてくれた。

｢ん？ゾムさんは怖ないから大丈夫やで｣

zm｢せやぞー｣

お兄さんた便乗して怖がらせた本人も撫でて来る。
あれだけ荒っぽい登場をしておきながらも、私を撫でる手は優しくてさっきまでの怖さとか、警戒心とかが秒で無くなった。
ゴロゴロゴロ、まだ3回目だけどめちゃくちゃ爆音で喉が鳴ってしまう。あー…そこです、そこがきもちいんです…はわ～

zm｢ふは、めっちゃ喉鳴っとるやん｣

大先生が任務中に拾って来た死にかけの毛玉を転がしながら、生きている事に安堵する。
チーノからの連絡で、ある程度の手当の準備はしていたが連れられた毛玉に目立った外傷は無く、強いて言うなら肉球に擦り傷がちょこっとあったぐらい。
それよりも酷かったのが極度の脱水症状と後ろ脚の疲労骨折。生き物……特に狩りをする獣にとって動けなくなる事は死んだも同然である。だから、どんなに強く立派な獣でも生きる事を諦め、虚しく死んでいく姿を何度も見てきた。
なのに、この片方の手のひらに収まりそうな程に小さな毛玉は生き残った。

｢く、ふはは！大先生ぇ！コイツ気に入ったわ、ちゃんと生かしたってな｣

ut｢モチのロンよ。前から猫飼いたかったし、しっかり面倒見たるつもりやわ｣

｢そうか！ならええわ。はよ怪我治して、元気に走り回る姿を見せてな。｣
最後にそっと、寝落ちた毛玉を撫でてからまたダクトに上がる。

さて、今度は誰のところに行って構ってもらおかな

ハッと意識が浮上する。
どうやら撫でられている間に寝落ちたらしく、いつの間にかフカフカのタオルを敷いたカゴの中に寝かされていた。
キョロキョロと周りを見渡してみる。場所は移動してないけど、お兄さんが居ないし、部屋も暗い。
『みぃー(だれかー)』

私の呼び掛けも虚しく、誰も居ない部屋に溶けて消えた。