ネクタイを緩めたら

誰より先に ページ45

side 宏光



なに...あいつ。

意外とでかい声出るんじゃん。

それに、突き飛ばされた男の驚いた顔...

Aの怒った顔...



宏光「...ぷっ...んはははは！」



俺は、こらえ切れずに大笑いしてしまった。

こんなに美人で大人しそうな子が、上司を突き飛ばして大声あげるなんて面白すぎる。


次第に、藤ヶ谷も部長も周りの皆も

それを見ていた全員が笑い出した。

それくらい、イメージとは違うAの行動が意外だったのだ。


本人はきょとんとしていて、なんで笑われているのか分かっていない。

未だに床に転がっている男は、自分の受けた仕打ちに顔を赤くしている。


イライラしてた俺はスッキリしたけど

当事者のAは我に返って、やっちゃった...って顔をした。

慌てて男に手を差し伸べて、すみません！すみません！って謝ってる。


そして、恥ずかしくて耐えられなくなったのか



A「ちょっと、お手洗い行ってきます...！」



って言って席を立った。


Aが気にしているほど、周りの空気は変な感じにはなっていなくて

皆笑いながらも、またさっきのように飲み始めた。



藤ヶ谷「あの子、大丈夫かな...？」



俺の隣に座っていた藤ヶ谷は、出て行ったAのことが気になるようで、そわそわしている。

このままじっとしていたら藤ヶ谷に先を越される...

そんなよく分からない思いが湧き上がってきて



宏光「...俺が様子見てくる」



そう言って俺は、Aの後を追ってトイレに続く角を曲がった。

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