ネクタイを緩めたら

新歓という名の飲み会 ページ42

side 宏光



2年前、仕事帰りに全員で行った居酒屋で

4月1日に入社したばかりの新入社員の歓迎会が行われた。

それは毎年恒例の行事で、新入社員はもちろん

特別な用事がない限り全員が、ほぼ強制参加の歓迎会だった。

俺は会社の人間との飲み会が苦手だったから、その年も嫌々参加していた。



藤ヶ谷「新入社員の皆さん、これから同じ職場の仲間として一緒に頑張りましょう。かんぱーい！」



幹事の藤ヶ谷が乾杯の音頭をとって、歓迎会は始まった。

藤ヶ谷が新入社員に積極的に話しかける中

俺は黙って目の前にある酒とつまみを消費していく。

早く終われー...なんて思いながら。


そのうち、皆酒がまわってきて、だんだんと盛り上がっていく会場。

横一列に並んだ男子の新人も、上司にどんどん酒を勧められて、断れずに飲んでいる。

これもまあ、毎年見る光景だ。


そういえば、女子はどこ行った...？

そう思って、キョロキョロと会場を見回すと

端の方で控えめに料理をつまむ新人の女子4人がいた。


その近くには女子社員が固まって座っていたはずだけど

時間が経って盛り上がっていくにつれて、皆が席替えをし始めて

今は4人の周りを若い男どもが囲っている状態になっていた。


早速お気に入りの新人見つけるつもりかよ...

俺は呆れながらその様子を眺めた。

そしてその時特に目に付いたのが、壁側に座って俯いていたAだった。

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