桜の木の下には、捨てたはずの恋が眠っている

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「……俺、だめだなぁ…」

「え？」

「嫌われたと思って…終わった気がしてた」

「……」

「まだ、始めてもない癖にな」

「っ…」




握り締めた手に力を込めて、

真っ直ぐに北山の顔を見つめる。

北山も、俺の真剣さを感じたのか

身体を俺と向き合わせる。





お前の目を真っ直ぐに見つめるの…、

いつぶりかな。





もう、逃げたりしない。









「ずっと、好きでした」






あの日よりももっと、ずっと前から…






「今も変わらずに、北山の事が好きです」






捨てようと思っても、捨てられなかった。

だから…この恋は捨てるべきじゃなかったんだと…




そう、信じても良いよな…？









「…………はぁー…」





北山の口から出たのは肯定ではなく大きなため息。





「……知ってるっつーの！」

「っ…！」

「遅いんだよ……ばか」

「……」

「…………俺も、…好き」






耐えきれなくなったのかそっぽ向いて

缶ビールを煽る姿には、あの日のかわいさなんて

欠片もなくて。




お互いそれだけ歳取ったんだなって。




でもその長い月日を、形はどうあれ

ずっと隣で歩んで来たのは夢なんかじゃなくて…。




そしてこれからは、終わったと思った恋が…

ようやく始まるんだよな。








とりあえずは…






「明日一緒に、桜を見に行かない？」





今度は同じ想いでもう一度、満開の桜の木の下で

お前に口づけをしたいから。




そして、真っ赤に色づくお前の頬に照らされて、

淡い桜の花びらが俺色に染まるところを

今度は二人で飽きるまで見ようじゃないか。







そうやって次の年も、またその次の年も、

桜を眺める横には、君の姿があればいい。







fin

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