56:雨後 ページ9
,
──1週間前──
伊地知「おはようございます。今日の任務ですが─」
天照大御神も驚く晴天の下、鼻歌交じりに乗車してきた最強の男に挨拶をする。
今日は午前中いっぱいに任務が数件。
午後には私用で家電量販店に出向くそうだ。
五条「りょー」
伊地知「まだ予定まで時間ありますけど、どこか寄りますか?」
五条「んぃや、早く行こう、せっかくこの僕が時間通りに来たんだからサ」
珍しく任務前に機嫌がいいこの男。
なんでも2人だけの予定だった1年が4人に増えたとか。
教師としては賑やかになるしやはり嬉しいのだろう。
伊地知「午後は何を買われに行くんですか?」
五条「ちょいと調理器具をね〜。あそこの寮シンクはあるけど炊飯器とか無いから」
伊地知「寮…新1年生にプレゼントですか?いいですね。」
五条「そーそー、悠仁はまだわかんないけど、葵夜の作る料理は絶品だからね!時折食べに行こうと思ってる。」
伊地知「へぇー、高校生にして五条さんの胃袋を掴むなんて凄いですね!(誰だろ…)」
聞いたことも無い名前に疑問符が浮かぶ。
地方から上京してくる芻霊呪法の使い手という女子だろうか。
しかし会って数日にしてもう手作りの料理を振る舞う仲に…?
伊地知「(生徒との距離感…保てているのだろうか…)」
心配事が増えていく中、信号が赤になったので車を停車させる。
すると後ろから携帯の着信音が鳴った。
五条「…あ、もしもしー?どうしたの?」
『………ど……?、……ニン……て、』
五条「…んふ、OK。……あ、いやいや、何でもない。じゃね」
まだ相手が話してる途中にプツリと通話を切ってしまう。
電話の奥から荒い声が聞こえてきたが、あれ怒ってるんじゃないのか?
伊地知「(……でも、随分柔らかかったな)」
雰囲気というか、何もかもが。
今も嬉しそうに携帯眺めてるし。
伊地知「(新しい恋人だろうか…全く羨ましい……)」
信号も青になったので大人しく発進した。
調理器具を買う相手も、電話の相手も同じ人間だとわかるのははまだ先になるとも知らずに。
五条「伊地知!帰りに近くのスーパー寄って!」
伊地知「承知しました…」
,
326人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:佐藤ななな | 作成日時:2021年9月14日 13時