紛失 ページ17
「あー疲れた...」
kn「おう、やっぱ家におると体力削れんなあ」
「部長、いつの間に背後に！」
kn「ふは、いつからやろな？」
kn「そうや、今日一緒に帰らへん?」
「え、いいんですか？！」
kn「ええも何も、俺から誘っとんねん。ほんとは車で行きたこうてんけど、今日は歩きですまんな」
「そんな、大丈夫です」
憧れの人の隣を歩けるだけで頬が上がる。
まずい、こんなだらしない顔をしているのを見られたくない。
どうにかして戻さなくては......
kn「はは、どうしたどうした、そんな変な顔して。なんや、なんかおかしなことでもあったんか」
「なっなんでもありません。は、早く帰りましょう」
kn「あ、せや、Aんこと連れてきたいとこあんねん」
「連れていきたいとこ、ですか」
どこだろう。
街は通るし、行きつけの居酒屋はここからだと近くはない。
ダメだ、検討もつかない。
kn「ついてきてな」
そう言われて連れてこられたのは川だった。
川といっても、ただの川ではなく、期間限定で夜市が開催されているらしい。
普段薄暗い河川敷が今日は屋台から発せられる光ではっきり見えた。
「たまにはこういうのもいいですね」
kn「もっと奥にいこか」
「はい」
中心に向かうにつれだんだん人通りも増えていく。
途中何度か人とぶつかってしまった。
その時はただそれだけだと思っていたのに。
「あれ、ない...」
kn「ん、どうした？」
「コネシマさん、俺のスマホ、ないんです...」
kn「何？！まさか盗まれたんか！」
「そんな...も、もしかしたら落としただけかも...」
kn「くっそ、すまん。俺が気づいてやってれば...」
「そんなことないです。俺の、不注意、ですよ」
kn「この人混みじゃ見つかりそうにないな。これも全部誘った俺の責任や。俺に弁償させてくれ」
「いや、俺の不注意なんでkn「俺が気、悪なってまうから。俺がやりたくてやるんや」それでも...」
kn「いっちゃん最新の持って来たるから楽しみにしとき。だから元気だしぃや」
「......はい、ありがとうございます」
kn「連絡できへんと不便やろからこれ持っとき」
「何から何まですみません」
kn「ええってことよ」
せっかくの帰り道に失態を晒してしまった。
それにこんなにお世話してもらって、コネシマさんは俺に呆れているんじゃないか?
終わり
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作者名：三寒 | 作成日時：2023年5月6日 21時
