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エスコートされるがまま座った高級車の座席はあまりに質が良くて。
平野くんにはぴったりその姿が似合うのに、私には全然合ってない。
そう思うと、なぜ私が今ここにいるのか不思議で仕方がない。
けれど、だからこそ今この現状が奇跡と呼ばずして何と呼ぶのか。
そんなことさえ考えてしまうなんて、全く可哀想な私の脳みそだ。
車を運転する姿。
まるで何かの映画のワンシーンのように見える。
平野くんがいるだけで、どんな瞬間もいい画になるから。
そんな時間が過ぎてしまうことが何だか勿体ない気がする。
何かに留めておきたいって思ってしまうのは、どうしようもない職業病だ。
「…本当に家まで送ってくれるんですか?」
「もちろんですよ!っていうか、Aさん俺より年上ですよね?
敬語使わなくていいです!」
「いや、でも私だけタメ語を使うのは…」
「じゃあ、俺も止める!ついでにさん付けも!
俺、もっとAちゃんに近づきたい!」
無邪気に何のためらいもなくそんなことを言う平野くん。
何てリアクションを取ったらいいのか、分からなくなって。
「…だって、俺とAちゃんは素敵な恋してるんだもん。」
きゅっと口角をあげて、またをそんなこと言う。
分からなくなる、自分の気持ちが、今どんな感情なのか。
全てが初めてだから、名前が欲しくなる。
名前は分からないけれど、ただただとても嬉しくて。
胸が苦しくて、早く動く。
「わ、私…!」
「ん、何?」
「分からないこと、ばっかりなんです…!
素敵な恋をさせてもらってるのに、何が何だかさっぱりで。」
「うん、分かってるよ。
だから、全部ちゃんと教えてあげる。分からなかったら全部聞いて?
俺はAちゃんに素敵な作品作って欲しいから。」
平野くんは私よりもずっと年下なのに。
大人の余裕を持っているし、なんなら私よりも大人だと思ってしまう。
年齢なんて、ただの数字なんだって。
今更ながらそう感じる。
「っていうか、また敬語になってるから。」
「あっ、ごめん。」
「ううん、可愛い。笑」
「へっ!?」
「あはははっ、Aちゃん最高だわ!」
「え…??」
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*咲七波*(プロフ) - Anzu1134さん» コメントありがとうございます!ゆっくりではありますが引き続き読んでくださると嬉しいです!笑 (2019年10月19日 6時) (レス) id: 3d58baab0f (このIDを非表示/違反報告)
Anzu1134(プロフ) - 更新とても楽しみにしています! 頑張ってください! なるべく早めに更新してくれるとありがたいです。 (2019年9月30日 1時) (レス) id: 68bfd8b6e0 (このIDを非表示/違反報告)
*咲七波*(プロフ) - あちゅぴさん» コメントありがとうございます!これからも読んでくださると嬉しいです〜! (2019年9月14日 11時) (レス) id: 3d58baab0f (このIDを非表示/違反報告)
あちゅぴ(プロフ) - このお話とても面白いです!!続きも楽しみにしていますね! (2019年9月13日 18時) (レス) id: 9024cefd53 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:*咲七波* | 作成日時:2019年8月23日 10時