夫が冷酷窮まりない件について-第弐夜-

６０　-　cruel ページ50

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___…離れぬ稚児のやうに、慎ましく在るへき姿へ



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「……」



温もり。それは紛れも無い程に温かで、優しい。

けれども淋しさを纏っている──、そんな語彙。


「…こんなに泣いちゃって……」


そっと起こさぬ様に、雫を拭うのは昔(・・・)からの決まり事。



「でも、やっぱり……泣かないで欲しいなあ。

Aの涙も私は綺麗で好きだけど…。

けど、やっぱり笑ってるAが…君が好きだ。

だから_____っ、…」



隠蔽しなければ。と、切に思う。

涙は綺麗で、けれど時には汚くなったりで迚では無いけれど凄く、曖昧で不確かなモノだと感じるから。



「……難しいものだね。

涙…って」


云いながら、気付く。

何も難しいのは涙だけでは無い事に。



「…目覚めて欲しい様な、欲しくない様な。

……なんだか変な気分だけれど」


涙だけなら未だ良かったのかも知れない。

涙だけなら…の、話だが。


「…どうせだったらーーずに目覚めてくれた方が良いかな…」


生憎とも、彼女は違う。


そうじゃない。私は知っている。


涙だけでは、拭えないモノがこの世の何処かに、


──存在する事を。


「…『人の嫌がることを進んでしましょう』か…」


あの頃意味が理解出来ず、判らなかった言葉が真逆こんな所で役に立つ何て。


「可笑しな気分だよ。

…君の嫌がる事を実行するだ何て」


道化にも程がある。


「狂ってる。と、止めたいと思ってるよ。

私だって。本当は。

けどそう思っていても。

……遣らなきゃ為らない」


喩え、君が今以上に私の事を疎み、嫌悪し、涙や血に塗れたとしても…ね。


「____だから、

『平穏』が訪れるまでは待って──…耐えていて欲しい。」


そうしたら、屹度。


大丈夫な筈だから。


二度と君を傷付けたりしないと、今此処で誓いを立てよう。



「…誰よりも君を____してるから、だから……」



───もう少しだけ、



「耐えていて欲しい」



願い、祈り乍、君の隣に今はほんの僅かな時でも寄り添いたい。



____勿論、目覚めない事を祈って。



ーー




-"伝へられぬ哀しみを。

拭い取れぬ、過ちをと。


然れど正しき路を、と。


____歩むが遅しと云ふけれど。

何人よ____己の思ふ路を歩ひて行かんと。


貴君は云ふ。


忘れぬ事無き、路を。


違わぬ路を、貴女は云ふ。-



(或る手記より)



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(目醒めよ。


汝、向き合へべく、


事無きへ。


目醒めよ、


涙に溺れる者よ。)








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【或る男の独白】

…誰でも良いから、状況を覆してくれ。

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