47 - cruel ページ37
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「…首領、這入ります」
無機質な部屋の前でそう一言、言い放ち。
取っ手に手を掛ける。
だが、両端にひっそりと佇んでいた護衛の構成員が通さまい…とでも、云う様に立ちはだかる。
当然、男____太宰は平然と無視する。
そして無遠慮と言う言葉を知らない、とでも言いた気な風貌でお構い無しに部屋へと続く扉を開ける。
「おや、太宰君。
君の方からとは珍しいね?
如何かしたのかね」
尤も此の部屋に居る人物も、無遠慮と云う言葉を知らない。
「…首領、」
問いに答えぬ侭、鴎外をじっと見据える。
「違うか。
……珍しく一人──ではない様だね。
本当、珍しい光景だ。
よし!眺めているのも退屈と云う物だから、
写真でも撮ろう、良いだろう…?ねぇ、太宰君。」
内面を薄く尖った刃が不気味な程器用に、背筋をなぞっていく。
「…彼女を連れて(・・・)来ました
それと写真は結構ですよ、首領。」
無慈悲と云っても嘘では無い。と云う位の表情を太宰は貼り付け乍、一歩距離を取る。
「有り難う。…此れで漸くだよ。
……漸く____
って、えぇ……!そっ…そんなぁ〜…」
安心したかの様な笑みを薄く浮かべる。
そして大袈裟に落胆する。
それは普通の人間が浮かべている『表情』と、善く似ていた。
「…首領、本当に」
"彼女を_____"
太宰は自分でも何を云っているのかと、薄々だが気付いていた。
「……いや、…何でも無───」
そう言葉を閉ざそうとした太宰に、鴎外は少し考える様な素振りを見せた後、口を開く。
「…太宰君、私の最適解に間違い何て事」
____一度でも、
「生じたりしたかい。
…え?無いだろう……?
なら善い筈だよ。
何も間違い等ないし、
且つ、合理的判断だと思うのだけれど…?」
"判らない"と、解答を教師に求める生徒の如く、純粋無垢な瞳で問い返す。
「ッ…!!……喩え、
首領の仰るそれが、合理的判断に成る得るとしても、
私は____」
視線が游ぐ。
海中を彷徨う、深海生物の様に。
そして。止まる事の無い、疲れを知らない、大型魚の如く、游ぎ続ける。
「…太宰君、」
名を呼ぶ声に色など無い。
有るのは、憐れみと歓びの感情だけだ。
「____これが私の最適解だよ」
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(思へ還へば
軟弱な思慮であった。
何て戯れ言を吐くは、
_____の証拠とも云えるのだろう、屹度。)
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【或る男の独白】
…誰でも良いから、状況を覆してくれ。
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七海@月と星−−君と幸福な世界(プロフ) - 曇天に笑うさん» 申し訳御座いません。(そう云って貰えて本望です。ですが過去篇が終了次第、再開するので待って居て下さると幸いです。感想有り難う御座いました) (2019年8月13日 16時) (レス) id: 94153de35f (このIDを非表示/違反報告)
曇天に笑う - せっかく更新するのを楽しみにしてたのですが (2019年8月13日 16時) (レス) id: 96967fede0 (このIDを非表示/違反報告)
七海@月と星−−君と幸福な世界(プロフ) - 華恋さん» 感想、有り難う御座います(そう云って頂けて本望で御座います。此れからも楽しんで頂ける様、精進致します。更新遅いですが如何かお付き合い頂けると幸いです。) (2019年8月7日 0時) (レス) id: 94153de35f (このIDを非表示/違反報告)
華恋 - えっと、、、控えめに言ってマジで好みです・・!!更新頑張ってください!無理はなさらずに! (2019年8月6日 23時) (レス) id: 8414810f45 (このIDを非表示/違反報告)
七海@月と星−−君と幸福な世界(プロフ) - Aster.さん» 大丈夫ですよ(いえいえ。此方こそ遅れてしまって申し訳有りません。悔しい…だ何て…。嬉しいです。優しい気遣い、有り難う御座います。本当に。私のペースで頑張りますね。…狙って遣って下さいませ〜。待ってますので) (2019年8月3日 20時) (レス) id: 94153de35f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:七海@返事・更新滞ります | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nanamikinn1/
作成日時:2019年7月31日 10時