40 - cruel ページ18
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「……」
太宰は迷っていた。
答えるべきか否かを。
鴎外は判って居た。
太宰が何故、自身の____を"躾"と称し、その身に刻印を刻み付けているのかを。
「…太宰君、君は彼女に同意を得ず。」
___躾を為しているのかい。
「…違います。」
芯の通る様な…声で答えた____"筈"であった。
「…では、質問の仕方を変えるとしよう。
太宰君、…君は今までに何度、」
____彼女を
「躾し──良いや、
感情の高揚を用いり_____」
段々と蛇口の様に細められてゆく、囁きは。
次第に首元へと這い上がってゆき。
「傷を負わせた?」
音を立て、締め上げてゆく。
「……」
太宰は答えない。
いや、この場合。
「答えられない」。
と、云った方が正しかった。
「……まぁ良い。
現段階で答えられなくとも、"何れ"答えて貰う心算ではいるから」
…"良し、"
と、赤子に話し掛ける様な笑みを一つ湛える。
「これで此の話は終いにしよう。
そうと決まれば、太宰君。…もう下がってくれて構わないよ」
綺麗な笑みを浮かべつつ、鴎外は云う。
簡略化的に。
且つ、合理的に。
其れは一種の概念に過ぎず。
また強迫に近しい物でもあった。
「…」
当然、返すべき返事が返って来る事は無く。
踵を返すとしよう、太宰がそう心の底で思っていた。
…のもほんの僅かな時間だけだった。
「あっ、」
と、鴎外が声を上げたからである。
「…」
無言を貫き乍、首だけを動かし、視線を向ける。
其処には数分前に見た侭の姿をした鴎外が、目を見開いていた。
「多分。
判ってはいると思うけれど念の為、伝えて措こう。」
真剣な眼差しで自身を見詰めるは、一人の男。
「この件は、他言無用と云う事にして措く様に」
───良いね?
「…」
矢張、この問いにも答える。と云う事はせず。
呆れる様な眼差しを向けている事にすら無関心…意識の外とあらば誰だって怒りはするだろう。
だが、鴎外は違った。
寧ろ…____、他人が見たら身を毛も弥立つ程の、綺麗な笑みを浮かべ。
我が子を見守る様な眼差しで、静かに佇んでいたのである。
その仕草が意味する物_____、
其れは。
互いの領地に足を踏み入れるな。と云う、宣戦布告の顕れでもあった。
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(正しき判断は
時に、
自身を、身体を、善をも滅ぼす。)
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【或る男の独白】
…誰でも良いから、状況を覆してくれ。
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七海@月と星−−君と幸福な世界(プロフ) - 曇天に笑うさん» 申し訳御座いません。(そう云って貰えて本望です。ですが過去篇が終了次第、再開するので待って居て下さると幸いです。感想有り難う御座いました) (2019年8月13日 16時) (レス) id: 94153de35f (このIDを非表示/違反報告)
曇天に笑う - せっかく更新するのを楽しみにしてたのですが (2019年8月13日 16時) (レス) id: 96967fede0 (このIDを非表示/違反報告)
七海@月と星−−君と幸福な世界(プロフ) - 華恋さん» 感想、有り難う御座います(そう云って頂けて本望で御座います。此れからも楽しんで頂ける様、精進致します。更新遅いですが如何かお付き合い頂けると幸いです。) (2019年8月7日 0時) (レス) id: 94153de35f (このIDを非表示/違反報告)
華恋 - えっと、、、控えめに言ってマジで好みです・・!!更新頑張ってください!無理はなさらずに! (2019年8月6日 23時) (レス) id: 8414810f45 (このIDを非表示/違反報告)
七海@月と星−−君と幸福な世界(プロフ) - Aster.さん» 大丈夫ですよ(いえいえ。此方こそ遅れてしまって申し訳有りません。悔しい…だ何て…。嬉しいです。優しい気遣い、有り難う御座います。本当に。私のペースで頑張りますね。…狙って遣って下さいませ〜。待ってますので) (2019年8月3日 20時) (レス) id: 94153de35f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:七海@返事・更新滞ります | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nanamikinn1/
作成日時:2019年7月31日 10時