37 - cruel ページ15
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一人の少女が眠りに付いたその頃____。
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「首領、先刻話した案件についてですが───」
黒服の反応を待たずに、執務室へと足を進める者が一人、…居た。
そう_____、
「彼(・・・)の訓練があるから」
と云って、出て行った筈の太宰の姿である。
「…嗚呼、太宰君。
君から来る何て珍しいねぇ、あっ。紅茶でも飲むかい?それとも____」
太宰の問いに返事したのは、椅子に腰掛け、微笑みを放っている___ポートマフィア首領、森鴎外。
「…首領、」
そんな鴎外の台詞に呆れを為している太宰は、負けじと声を出し続ける。
「…判っているよ」
落ち着いた雰囲気で制する。
「…先刻、話した件の続きをしたいのだろう?」
"まぁ、待ちなさい"
と、幼児に向かって諭すかの様な口振りで云う。
「…」
太宰は答えない。
だが、僅かに瞳孔が細められた。
先を疾く云え。とでも云っているかの様な仕草をしている事は聢かであった。
「君が話してくれた件については善いと私も思うよ。
素晴らしいと感嘆の声を上げる位にはねぇ
けど───、」
と、ふいに鴎外の声色が硬くなる。
「もう一つの頼みは諒解し得無いねぇ」
頬づえをつき乍、そう呟く。
「……何故ですか」
暫しの沈黙の後、そっと囁くかの様な声量で太宰は言葉を紡いだ。
そんな太宰をものともせず、少し考える様な仕草をしつつ、呼ぶ。
「…太宰君、」
呼ばれた太宰の顔から滲み出る色。
「……」
それは、困惑と焦りの色…に近しい色。
流石の太宰でも、鴎外の纏う空気…───雰囲気には勝てないらしく、焦りと云う感情が、表へと姿を露にしようとしているのが目に見える。
鴎外は、一拍息を吐いてから云った。
「____君は何に対して畏れを為しているんだい」
と_____。
一瞬、風が通り過ぎる依りも疾く、鷲色の瞳が静かに揺らいだ…気がした。
太宰は何も答えなかった。
唯、その代わり…とでも云う様に、開いていた筈の掌が固く握り締められ、見開かれていた瞳孔が閉じられている。と云う事が何よりの証拠とも云えるのでは無いだろうか。
「もう一度、訊こう。」
平淡な声で、
鴎外は、再度問うた。
「____君は何に対して畏れを為しているんだい」
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(懼れの対象とは。
何の様にして、
対処すべきなのだろうか。)
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【或る男の独白】
…誰でも良いから、状況を覆してくれ。
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七海@月と星−−君と幸福な世界(プロフ) - 曇天に笑うさん» 申し訳御座いません。(そう云って貰えて本望です。ですが過去篇が終了次第、再開するので待って居て下さると幸いです。感想有り難う御座いました) (2019年8月13日 16時) (レス) id: 94153de35f (このIDを非表示/違反報告)
曇天に笑う - せっかく更新するのを楽しみにしてたのですが (2019年8月13日 16時) (レス) id: 96967fede0 (このIDを非表示/違反報告)
七海@月と星−−君と幸福な世界(プロフ) - 華恋さん» 感想、有り難う御座います(そう云って頂けて本望で御座います。此れからも楽しんで頂ける様、精進致します。更新遅いですが如何かお付き合い頂けると幸いです。) (2019年8月7日 0時) (レス) id: 94153de35f (このIDを非表示/違反報告)
華恋 - えっと、、、控えめに言ってマジで好みです・・!!更新頑張ってください!無理はなさらずに! (2019年8月6日 23時) (レス) id: 8414810f45 (このIDを非表示/違反報告)
七海@月と星−−君と幸福な世界(プロフ) - Aster.さん» 大丈夫ですよ(いえいえ。此方こそ遅れてしまって申し訳有りません。悔しい…だ何て…。嬉しいです。優しい気遣い、有り難う御座います。本当に。私のペースで頑張りますね。…狙って遣って下さいませ〜。待ってますので) (2019年8月3日 20時) (レス) id: 94153de35f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:七海@返事・更新滞ります | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nanamikinn1/
作成日時:2019年7月31日 10時