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惨。 ページ3






「…手前、巫山戯ンのも好い加減にしろよなァ。
……俺の目は誤魔化せねぇぞ。」




『判ってンだろ』。




そう云いたげな、中也の紺碧()が、郁葉を捉えて離さない。




「……さぁ?知らないなぁ、僕は。」




郁葉は淡々と述べ、摑まれている胸倉に視線を落としながら、小鳥が囀って(さえず)いるかのような声で云う。




「嗚呼、そうそう。云い忘れていたのだけれど。
……無事に殺せると善いねぇ、今度は(・・・)




プツン、と厭な音が、中也から発せられた。



音した事に。郁葉は微笑みを湛え、中也を見据え続けるのだった。



あろう事か、中也の手が痙攣してしまった患者の如く、可笑しいと云わざる終えない程に震えを為し始めた。



そうして、震えを為してしまった手、同様に。




蒼く澄んだ瞳も『震え』と云う情報が伝達しているらしかった。




その風景が、郁葉の瞳へと映り込んだのは数分が経過した頃の話である。




「!ははっ、……暴力はいけない。と教えた筈だけれど、ねぇ…?」




そう、世界が反転して見えたのは。




中也が郁葉の体躯を『重力操作』し、浮遊させていた所為(せい)であった。




だが、それは当然の帰路であった。



「………五月蝿ェ。」




中也は壁の染みでも見ているのか、蔑んだ視線で郁葉の体躯に脚を掛ける。



ミシ、と鈍く、厭な音が郁葉の耳を、鼓膜を刺激する。




「っ!随、分…重く、なった、ねぇ…」





流石の郁葉も中也の重力操作には、敵わない、と感じたのだろうか、咳き込み、虚ろな目で空を見上げていた。




中也はそんな虚ろな姿の郁葉を見て、黙考する。





そして、何を思ったのか。




––––––重力操作を解いた訳なのである。




瞬間、郁葉の体躯が過剰と云っても良い程の、跳ね上がりを見せた。




そうして、跳ね上がった自分の体躯を見て。




郁葉は。ぽつり、と囁くような声で溢す(こぼす)のだった。






「……屹度、本部に辿り着いたら、心配…されるんだろう、なぁ……。」









詩。→←弐。



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月華 - 七海ちゃん、ごめんね。こちらにメッセージします。事情により、明後日まで来れません。明後日になったら必ず来るので、待っててください。 (2021年1月18日 13時) (レス) id: cbd5fcf97e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:晴幸 | 作成日時:2020年9月17日 11時

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