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02 ページ32







「藪くん…俺はここを出ていく。」




長く、いとおしげに王さまを見つめたあと
お妃さまは告げました




「約束を守れなくてごめん。
けど、俺はもうここには居られないんだ。」




どう言うことだ、と
王さまが口にするより早く
お妃さまの指がその唇に触れます

優しい指先はあたたかく
そこから伝わる熱に
王さまは動けなくなりました





「白雪姫を失ったことは
藪くんにとってとても辛いことだと思う…

でも、きっといつか
その辛さを拭う喜びが訪れる…」





あのまま白雪姫と結ばれたとして
姫は王さまを“男として”は愛さない

そんな姫を“男として”愛し続けるより
お互いに愛し愛されるひとと
廻り合い、結ばれて欲しい


その喜びを知ったからこそ
お妃さまはそう思いました

だってそれは
何にも代えがたい喜びを与えてくれるから…





「心から、キミの幸せを願うよ…

あの時俺を
お嫁さんにしてくれて…ありがとう…」





ふわり、お妃さまの唇が
王さまのそれに重なりました

それに驚いてまばたきをした一瞬のあと





「山田っ!?」




まるで幻のように
お妃さまの姿は消えていました

ほんの一瞬目を閉じただけなのに…





「だれかっ!誰かいないか!?
妃の所在を確かめろ!」





静かな城に響き渡る声に
兵士が駆けつけ召し使いたちも起き出し
城はパニックになります

明かりが灯され
庭では松明が焚かれ
ざわめきは城下にも広まって行きました





「探せっ!なんとしても見つけ出せ!」




矢継ぎ早に指示を出しながら
王さまはお妃さまの部屋へと向かいます

突然の失踪の手がかりでも無いかと






「王!こちらを!」





一足先にお妃さまの部屋に来ていた侍女が
王さまに白い封筒を差し出しました

そこに綴られた文字は
あの美しいお妃さまのものです





「寄越せっ!」





引きちぎるように封を開け
便箋を開いた王さまは青ざめます

そしてそのまま膝をつき
顔を覆って天を仰ぎました




「山田…お前は_____!」





したためられた文字は短く
けれど、そこに揺らぎはありません




___ありがとう、藪くん

  俺は愛する人と行く____




王さまの中で
お妃さまの“愛する人”は狩人でした

そして狩人の圭人は
もうこの世には居ません





「そんなに…愛していたのか…」





03→←別れの一幕 01



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ぐるぐる(プロフ) - はぁぁぁ…山田くん幸せになれてよかった!大貴と一緒ならこれから先幸せに暮らせますよね??残されて王様が心配です…続きにハラハラドキドキがたまりません! (2019年10月8日 7時) (レス) id: b11125461f (このIDを非表示/違反報告)
らな(プロフ) - tomo0614qpさん» うんうんうん、ひかいのはお似合いなのです!夢と希望とロマンと萌えがたっぷり!いーよねぇ、ひかいの…ハッ!うっとりしすぎた…すいません!次もよろしくです! (2019年9月23日 8時) (レス) id: b35b5df26e (このIDを非表示/違反報告)
らな(プロフ) - けーままさん» へっへー、かわいいカップルですよねー♪ひかいの大好きなので、二人には速くイチャイチャしてほしいです。つぎは4章、よろしくー! (2019年9月23日 8時) (レス) id: b35b5df26e (このIDを非表示/違反報告)
らな(プロフ) - みるみるみるきーさん» 最近ゆといの推しのひと、多いねぇ。でもあたしはひかいのなのさっ。時代に逆らってでも推しカプを書くぞ!(笑) (2019年9月23日 8時) (レス) id: b35b5df26e (このIDを非表示/違反報告)
らな(プロフ) - shootingstarhapさん» 予想当たりましたかー!よかったです♪そして第4章が出来上がりましたので、お時間ある時見にきてくださいね。よろしくー! (2019年9月23日 8時) (レス) id: b35b5df26e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:らな | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/isut/ano/  
作成日時:2016年10月15日 6時

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