snow white (inoo kei)

溢れ出した想い　01　 ページ30

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圭人がお妃さまと引き合わされたのは
いつつの誕生日を迎える頃でした




“お前はこれから、このお方の影になる”




愛らしい姫に見とれる圭人に
彼の父親はそう諭します




“姫を守り、その命に従うことが
お前に与えられたすべてだ”




その意味を完璧に理解するのは
まだ幼い圭人には無理でした

それでもわかったことがひとつ




“それじゃ、僕はこの子のものなんだね？”

“そうだ。お前は姫さまのために生きる”




なんて幸せなんだろう…と
幼い圭人は喜びに震えました



僕がこの子のものならば
ずっとずっと一緒にいられる

天使のように愛らしいこの子が
僕の仕えるただひとりの相手なんだ…！




そしてその時から
圭人はお妃さまの側で過ごしました

大きな身分の隔たりはあるものの
主従としての深い絆を造るため
ふたりは幼い頃を共に過ごしたのです


ですがそれは
お妃さまが十の誕生日を迎えたときに
唐突に終わりを迎えます



“姫ぎみは大人になられる準備を始める。
お前はお前のための
準備をしなくてはならない”



机を並べて共に学び
同じテーブルを囲んで食事をし
笑いあった日々の替わりに訪れたのは
暗殺者としての訓練

厳しいそれに耐えられたのは
彼の中に、支えとなるものがあったからです




“涼介のためなら何だってできる。
だって僕は彼女のものなんだ…”




その時すでに
圭人はお妃さまを愛していました

互いの身分を思えば
実ることなど有り得ないとわかっていても
それでも圭人は悲しくありません



“僕らは、ずっと一緒にいられる”



影は影

並んで歩くことはできなくとも
離れることもない


それならいいと思えるほどに
圭人は彼女を愛していたのです






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