snow white (inoo kei)

小さな痛み　 ページ16

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夕食を終え、いつものように
お妃さまは自分の寝室へと戻ります




「はぁ…やっぱ足、痛ぁい…」




ハイヒールを蹴飛ばし
これまたいつものように小部屋へ




「だーいき。ただいまぁ。」


「おかえり涼介。今日もお疲れ様。」





ポフンとクッションに座る姿に
鏡の青年は密かに吐息を漏らします

この数年で輝きを増したお妃さま

その美しさに見惚れて
声が出なくなってしまうのです




「大貴？どーしたの？」


「え？どーもしないよ。
今日はね
すごく素敵な花畑を見つけたんだ。」


「わ！ほんと？
見たい見たい！見せて！」




瞳を輝かせたお妃さまの望みを
青年はすぐさま叶えました

鏡を埋め尽くすほどの黄色い花畑は
大きな山をいくつも越えて
海を渡ったその先にあります




「すごいねぇ…
うちの国は雪だらけなのに
この国は春みたいだ。」


「そぉだね。
この国は一年中春なんだよ。」


「え？そんなのありなの？」


「もちろんありさ。
一年中夏の国も
一年中冬の国もあるんだよ。」




目を丸くしたお妃さまを
青年は優しく見つめます



涼介…

僕と出会ったばかりの頃には
とても幼かったキミも
いまやすっかり大人になった

白雪姫ももぉすぐ成人して
そう遠くないうちに王さまの子供を産む


そしたらキミも
立派な男性と恋をして…




チクン！




ほんの一瞬
青年の胸が痛みました




「あれ？」


「ん？なに？」




鏡に映っていた景色が消えて
そこに胸を押さえた青年が現れます




「どうしたの？」


「ん、なんかここが痛かった…よーな？」





首をかしげた青年は
心配そうな顔をしたお妃さまに気付いて
明るい笑顔をみせます




「気のせいだったみたい。
それに僕
ここにいる限り病気にならないし。」


「そっか。よかった。」





ホッとうなずいたお妃さまは
そのあともじもじとうつむきます



「それであの…
今夜もお隣…見せて、くれる…？」


「かまわないよ。」




パッと鏡から青年が消えて
暗くなったガラスの中に
王さまと白雪姫の姿が
ぼんやりと浮かび上がり始めました





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