snow white (inoo kei)

情熱の行方　01　 ページ33

・




「ヤっ、やだッ…
圭人離せッ！離せェーー！！」



お妃さまがどんなに叫んでも
誰もそれには気付きません

なぜならこの部屋には
特殊な魔法が施されていたからです



お妃さまのお生まれになった国は
古来より不思議な力を持っていました


千里を見渡す魔法使いが住まう鏡

そんな奇跡を所有し
しかもそれを忘れ去ることができるほど
あの国は魔術に長けているのです



圭人が使った魔法は
一定の範囲を全て隠す魔法

声も気配も、姿さえも見えなくさせるそれは
王族に付き従う
『特別な従者』にだけ与えられる
特別な指輪に秘められた魔法でした



多種多様な任務を遂行するため

そのために与えられた指輪は
今夜の二人を世界から隔絶しています




「けぃ…とッ…ハァ、やめッ…！
もお止めろよッ！けいとぉ！」




お妃さまの必死の抵抗は
圭人にとって、ささやか過ぎるものでした

厳しい訓練に耐え抜き
長年狩人として
獣たちと命のやり取りをしている彼にとって
たおやかな女性の爪が与える痛みなど
ものの数ではありません




「ごめんね、涼介。
だけど…どうしても僕は…」




暴れる身体を傷付けぬよう
注意を払いながら体重をかけて
圭人はお妃さまの肌をまさぐります

乱れたドレスから豊かな乳房がこぼれ落ち
そこに唇が触れました




「はぁ、ンッ…あぁ…！」




己の行為に震えた愛しい人の姿に
圭人の心は高ぶります

愛しいと、抱きたいと
何千何万と夢見たそれが
いま、彼の腕の中にある



夢じゃない

涼介…愛している…！



思いの丈をつぎ込むように舌を這わせ
柔らかな肌を啄めば
拒絶の声は甘く溶けて…




「けぇと…っ、ふっ…いやぁ…」





涙に濡れたこの声に煽られながら
圭人はお妃さまを乱して行くのでした






・

02→←裏切られた信頼　

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す