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ー side 藪 ー



 シャワーを浴びて戻ってみると、伊野尾はまだベッドに転がってボンヤリしてる。



「おい、マジにそろそろしゃっきりしろ。遅刻するぞ。」



 目の前で手をヒラヒラさせるとやっと焦点が合って、「やぶぅ、変わんないねぇ…」とか呟かれた。



「なんの話しだよ。」

「ん、なんでもない。俺もシャワーしてくる。」



 フラフラとベッドを降りてバスルームへ向かった背中を眺めていたら思い出した。

 そーいやあの時も、俺ぁさっさとシャワー済ませてベッドに寝そべる伊野尾をたたき起こしたっけな…




「もう三年になるのか…」



 始まりは好奇心だった_____と、伊野尾は今でも思っているだろう。
 だがあの時俺は、伊野尾を抱きながら別の奴を抱いていた。



「ひかる…」



 何年も、何年も、俺はあいつが好きだった。
 隣で微笑むあいつを、友達としてじゃなく抱き締めたいと願って身体を熱くしたことは一度や二度じゃない。

 だけどその気持ちをあいつに告げることはできなかった。
 なぜならそれは…



「ごめん、お待たせ。」



 聞こえた声に振り向いて、水滴を拭う姿を見れば苛立ちが募る。

 俺があの時こいつを抱いたのは、好奇心なんかじゃない。



「さっさと支度しろよ。」

「わかってる。」



 まだ濡れた髪を掻き上げる仕草も、何気なくシャツに袖を通す動きも、逐一全てが憎らしい。

 こいつさえ居なければ…と何度も繰り返した思いがまた頭を(よぎ)る。



「久しぶりに全員集まるんだから遅れたらうるさいぞ。」

「わかってるってば。」



 わかってねぇ。
 お前は何一つわかっちゃいねぇ。

 俺が欲しくてたまらないものを造作なく手に入れ、なのにそれに気付いてないお前は…



「行くぞ。」



 部屋を出て歩きながら、拳を握りしめた。

 三年前、俺がお前を抱いた理由(わけ)は…



 _____ただ、あいつに愛されるお前を滅茶苦茶にしてやりたかっただけ。
 





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ぐるぐる(プロフ) - 落下回避。たかきくんヤキモチ妬いちゃってたんですね〜!いいぞ!もっと妬いちゃえ(笑)あっちでもこっちでもイチャラブなジャンプちゃん(o´艸`)安定の裕翔くんも好きです(笑) (2019年9月7日 0時) (レス) id: b11125461f (このIDを非表示/違反報告)
ぐるぐる(プロフ) - やまいのちゃん。この2人は美しすぎて…会えない時や顔が見えないから素直に言える言葉ってありますよね(^-^)こんなにストレートに愛を囁かれたいです(o´艸`) (2019年9月6日 23時) (レス) id: b11125461f (このIDを非表示/違反報告)
ぐるぐる(プロフ) - タバコを吸う2人がすごく大人に感じました本当に有り得そうな情景で、この2人はきっとこの関係が続くのかな〜と思いました。 (2019年9月6日 23時) (レス) id: b11125461f (このIDを非表示/違反報告)
らな(プロフ) - みるみるみるきーさん» どのお話しだよ!そーゆーのは早く言わないといつまでも載らないぞっ!(笑) (2019年9月1日 12時) (レス) id: b35b5df26e (このIDを非表示/違反報告)
らな(プロフ) - shootingstarhapさん» いつもながらのご来場ありがとう( ´∀`)古いのはほーんと恥ずかしいんですよ、いまでも下手くそなのにさらに…なもんで(笑)でも、楽しみにしてくれてるって聞くと頑張るパワーになるのですよ。また次もヨロシクです♪ (2019年9月1日 12時) (レス) id: b35b5df26e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:らな | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/isut/ano/  
作成日時:2019年4月29日 19時

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