問33 ページ42
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タ、タ、タ、タ、タ――――
一人の少女が階段を上る。自身の足音が響くたび、授業中の静けさに罪の意識を感じた。
タ、タ、タ――――
階段を上りきって、一枚のドアの前に立った。そうっとドアノブを掴み、少し力を加えてやれば、いとも容易くガチャリと回ってしまった。
―――ドアを開くと、少女は風を感じてわずかに目を細めた。前方に見知った人物の姿を認めると、屋上に足を踏み入れ、「ちゃんと居てくれてよかったです」と安堵したように溢した。
清々しい風に亜麻色の髪を靡かせ、沖田総悟が欄干にもたれていた。
「自分から呼び出しといてすっぽかす程ドSじゃねェよ。そりゃ最早虐めっ子の所業だろィ」
「授業中に屋上に呼び出す時点で、十分悪い虐めっ子っぽいですって…」
微苦笑し、頬を掻く綾戸。一連のなんちゃってストーカー事件を経た後、世話になった沖田に『埋め合わせ』として三時限目にここに来るよう指示されたのだ。今頃クラスメイト達は優等生の綾戸の失踪に大騒ぎだろう。山崎など勘の良い者は、同じく姿の見えない沖田との関連性にまで気付くかもしれない。
―――そういえば、前にも一度だけ遅刻したことがあったっけ。
ふいに、綾戸は半年前の出来事を思い出す。あの時も自分の傍にはこの青年が居た。
―――ひょっとすると、順調に悪の道に引きずり込まれているのでは…?
『果ては深夜に財布持って来いとか言われるのかな…』とにわかに身震いする綾戸を見据え、沖田が口を開いた。
「これから話すことは他言無用。…誰にも聞かせたくねぇような、小っ恥ずかしい話でさァ」
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キサク(プロフ) - stereogirlさん» stereogirlさん、またお会いできて光栄です!苦心しましたが、喜んで頂けたならよかった!綾戸は元々ちょっと面倒臭い子ですので、付き合って初めて発覚する一面ですね(笑)私も、この二人はまたいつか書けたらいいなぁと思っています。ご愛読ありがとうございました! (2020年5月18日 20時) (レス) id: 8572571c50 (このIDを非表示/違反報告)
stereogirl(プロフ) - わーい、後日談ありがとうございます!一致後の夢主、ちょっと可愛くなりましたね!笑。また二人の進路にお会いできたら嬉しいです。 (2020年5月18日 20時) (レス) id: ebd32c96af (このIDを非表示/違反報告)
キサク(プロフ) - stereogirlさん» コメントありがとうございます!そうですね、まだ六個程話の空き枠があるので、是非書いてみようと思います!少しでも面白いと思って頂けたなら幸いです、改めてありがとうございました! (2020年5月7日 7時) (レス) id: 8572571c50 (このIDを非表示/違反報告)
stereogirl(プロフ) - 面白かったです!可能なら、利害が一致した二人の今後も読みたいなぁ、と思います! (2020年5月7日 2時) (レス) id: ebd32c96af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:キリコ | 作成日時:2020年3月31日 12時