過去問 ページ38
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放課後。大会が近い為いつも以上に煩わしい土方を撒き、部活をサボって早々に帰ろうとする沖田。足早に階段を下っていると、階段の中途で横一列になった女子達がノロノロと下りており、進路を阻んでいた。
―――人の迷惑を考えねェ女子共が。ドラ○エのパーティーを見習えってんだ。
やや青筋を立てつつ、強行突破しようと考える沖田だったが―――
「綾戸ってさぁ、」
ふいに女子の一人が、そんな名前を口にした。
「Z組行ったんでしょ?かわいそー…」
「えー、でもさ、同じクラスになんなくて心底良かったと思ったわ」
「委員長気取りかなんか知らないけど、ちょっと、さ…?」
「ね」
「正直ウザくなかった?」
「あ〜…わかる」
「何か先生、アイツばっか贔屓してたもんね」
「アイツ、先生の前では超媚びてっから」
「マジ?」
「コンプレックスでもあんじゃない?」
「てゆーかアイツ、友達と話してんの見たことないんだけど」
「勉強に必死過ぎてコミュ症になっちゃいましたかー」
アハハハッ、と大袈裟に声を出して笑う女子達。後ろの沖田の存在には気付かない様子で、階段を下り終え昇降口へ向かっていった。
―――真面目を通せば委員長気取りと嫌われ、
―――努力をすれば必死と笑われ、
―――お人好しは媚びてると蔑まれる
「……」
解ってる。コイツ等の陰口は理不尽も甚だしい。出来過ぎな綾戸に嫉妬して、群れの中で好き勝手貶しているだけだろう。
―――しかし。ここまで露骨な風評被害に気付かない程、綾戸Aという人間は鈍感だろうか。
『綾戸Aです。…ええと、よろしくお願いします』
教壇の前に立たされた時の、俯きがちな態度。
『いやいや、そんなことありませんよ?』
人の悪意に気付かないフリをして、軽くあしらうのに慣れた様子。
『あははっ…皆さん、よろしくお願いしますね』
思いがけず溢れてしまったというような、安心しきった笑顔。
傷が付かないのは免疫の結果。
―――大したもんでさァ、優等生。
沖田は知らず、奥歯を食い縛った。
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キサク(プロフ) - stereogirlさん» stereogirlさん、またお会いできて光栄です!苦心しましたが、喜んで頂けたならよかった!綾戸は元々ちょっと面倒臭い子ですので、付き合って初めて発覚する一面ですね(笑)私も、この二人はまたいつか書けたらいいなぁと思っています。ご愛読ありがとうございました! (2020年5月18日 20時) (レス) id: 8572571c50 (このIDを非表示/違反報告)
stereogirl(プロフ) - わーい、後日談ありがとうございます!一致後の夢主、ちょっと可愛くなりましたね!笑。また二人の進路にお会いできたら嬉しいです。 (2020年5月18日 20時) (レス) id: ebd32c96af (このIDを非表示/違反報告)
キサク(プロフ) - stereogirlさん» コメントありがとうございます!そうですね、まだ六個程話の空き枠があるので、是非書いてみようと思います!少しでも面白いと思って頂けたなら幸いです、改めてありがとうございました! (2020年5月7日 7時) (レス) id: 8572571c50 (このIDを非表示/違反報告)
stereogirl(プロフ) - 面白かったです!可能なら、利害が一致した二人の今後も読みたいなぁ、と思います! (2020年5月7日 2時) (レス) id: ebd32c96af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:キリコ | 作成日時:2020年3月31日 12時