過去問 ページ36
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「―――そういう訳で、今年からお世話になります、綾戸Aです。…ええと、よろしくお願いします」
「はい拍手―」
銀八の気の抜けた声を合図に、パチパチと拍手が鳴る。教壇の前に立たされたソイツ―――綾戸Aは、居心地悪そうに目を伏せていた。
―――そりゃ、教室の前うろうろしてたら重傷のゴリラが飛んできたんだ。無理もねェや。
気の弱い哀れなヤツ。それが沖田の、綾戸Aに対する第一印象だった。
「んじゃ、一時限目は新たなクラスメイトと仲良くする時間ってことで。お前ン席は斎藤―――あのアフロ系男子ね、そいつの隣。んじゃ、俺は職員室行ってっから、てめェらは勝手にわちゃわちゃやっててくれ」
銀八が暢気に教室を出ていった後、綾戸は指定された席へ踏み出す。晴れ舞台を歩く花嫁のような緊張っぷりだったが、何とか辿り着き、斎藤と呼ばれた男子の隣に腰掛けた。
それを皮切りに、クラスメイト達は一斉に彼女を取り囲んだ。
「よろしくナ!綾戸!」
「さっきは驚かせちゃってごめんなさいね」
「ま、このクラスに来ちまったのは災難だったな。マヨネーズ要るか?」
「ちょっとぉ?新入りの貴方に言っておくけど、銀さんは私のものなんだからね!!」
「クラスメイト同士、仲良くやっていきましょう!後で特別に若の秘蔵写真を見せ―――」
「ウラァァァァ!!」
「グボァッ!」
「なぁアンタ、良いバイト先知らねぇか。いや、粉の運び屋とかそういうの以外で」
「花はお好きですか?」
「すまない、目が覚めたら廊下に倒れていたんだが、俺は誰なんだ?」
「ちょッ、風紀委員長!?アンタは姐さんに殴られたんですよ!!」
わいわいがやがや。
怒涛の声に呆気にとられる綾戸だったが、次第に毒気を抜かれたように、
「あははっ…皆さん、よろしくお願いしますね」
―――その時の笑顔が、やけに沖田の印象に残っていた。
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キサク(プロフ) - stereogirlさん» stereogirlさん、またお会いできて光栄です!苦心しましたが、喜んで頂けたならよかった!綾戸は元々ちょっと面倒臭い子ですので、付き合って初めて発覚する一面ですね(笑)私も、この二人はまたいつか書けたらいいなぁと思っています。ご愛読ありがとうございました! (2020年5月18日 20時) (レス) id: 8572571c50 (このIDを非表示/違反報告)
stereogirl(プロフ) - わーい、後日談ありがとうございます!一致後の夢主、ちょっと可愛くなりましたね!笑。また二人の進路にお会いできたら嬉しいです。 (2020年5月18日 20時) (レス) id: ebd32c96af (このIDを非表示/違反報告)
キサク(プロフ) - stereogirlさん» コメントありがとうございます!そうですね、まだ六個程話の空き枠があるので、是非書いてみようと思います!少しでも面白いと思って頂けたなら幸いです、改めてありがとうございました! (2020年5月7日 7時) (レス) id: 8572571c50 (このIDを非表示/違反報告)
stereogirl(プロフ) - 面白かったです!可能なら、利害が一致した二人の今後も読みたいなぁ、と思います! (2020年5月7日 2時) (レス) id: ebd32c96af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:キリコ | 作成日時:2020年3月31日 12時