稀血の誘惑に ページ27
「人を襲わない証明...どうやって」
不死川がそう問いかけた瞬間、微かに風を切る音がし、横を見ると、禰豆子の入っている木箱が消えていた。瞬く間の出来事だった。
木箱は、瑠璃千代の手元に移っていたのだ。
この場にいた柱でさえも、気付けるものは殆ど居なかった。
彼女は、丁寧に木箱を開く。
しかし禰豆子は警戒しているのか、日陰に移っても外に出て来ようとしない。
「禰豆子さん、あなたを傷付けるつもりも、傷付けさせるつもりもありません。あなた自身を..そしてお兄さんとお姉さんを守る為にも、今ここで証明しなければならないのです。わかりますね?」
すると、恐る恐るといった様子で禰豆子は外に出てきた。不安気に瑠璃千代を見上げる。
焦った様子を隠し切れない柱達とは反面、
鬼の禰豆子を目の前にしても、彼女は微笑みを絶やさなかった。
そして、瑠璃千代は信じられない行動をとる。
日輪刀を抜刀したかと思えば、
己の腕を斬りつけようと刀を振り上げた。
その時
「時透様、手を離してくださいな。」
彼女の刀の切っ先が、肌に触れるか触れないかの距離で間一髪、瞬時に飛んできた時透が抑え込む。
彼らしくもなく、必死な様子で...
その様を、彼を知る面々は意外な光景を目の当たりにしたように見つめていた。
「嫌だ。【稀血】であるあなたの血を見たら、この鬼はきっと食らいつく。出来ない...。」
辛そうな表情でそう言う彼は、一切力を緩めようとしない。瑠璃千代は小さく溜息をついた。
「柱になったあなた様ならお分かりになるでしょう。感情に流されず、見定めなければいけないものが何か。私は今は育手です。未来に可能性を繋いでいかなければいけない。さぁ、手を離してくださいな。」
彼女の言葉を聞いた時透は、するりと力を抜き手離した。
刀はあっさりと彼女の肌を切り裂き、血が滲み出る。
それを見て匂いを嗅いだ禰豆子は、途端に
目の色を変え、みるみる内に鬼特有の肌に浮き出た血管が目視でわかる程になっていった。
フーッフーーッと荒い息遣いで、瑠璃千代の傷口から眼を逸らせないでいる。
炭治郎は匂いでわかる。
彼女は、禰豆子を全く警戒していない。
それは、万が一襲われたとしても
対処が出来ない。下手をすれば死ぬ。
その最悪のヴィジョンさえも覚悟した上で、
証明してくれようとしているのだ。
【稀血】
それがいかに鬼にとって甘美なご馳走であるか、炭治郎も知っている。
「禰豆子っ!!」
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八千代(プロフ) - Sun moonさん» ありがとうございます(*´-`)むいくんは天使 (2020年11月24日 20時) (レス) id: 23228d6fd7 (このIDを非表示/違反報告)
Sun moon - むいくんが可愛い(真顔) (2020年11月24日 17時) (レス) id: 73a4d7a977 (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - ゆずポンさん» 1話から見直してくださってるなんて...有難いです(;ω;)ありがとうございます!キャラの気持ちの変化だったり意識して書いてみてるので、何か違った発見がゆずポンさんの中であったらいいなぁと思います。 (2020年9月6日 15時) (レス) id: 769605b6ca (このIDを非表示/違反報告)
ゆずポン - 八千代さん» そうですか!今1話から読み直してます。何回見ても面白ですね! (2020年9月6日 15時) (レス) id: 6633b9c75f (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - ゆずポンさん» コメントありがとうございます。すみません、炎炎ノ消防隊はアニメ1、2話見た程度で全然詳しく無くて(泣)日本神話の神様なので結構色んな作品に使われてるようですね! (2020年9月6日 14時) (レス) id: 557e2177e8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:八千代 | 作成日時:2020年2月4日 13時