親心 ページ6
そう伝えれば、禰豆子は微笑ましそうにこくりと頷いた。でも彼女はきっと気付いていないと思う。ただ単に、俺は【姉さん】と会うだけと思ってる。まさか自分の姉と兄が、知らぬ間に恋人同士になってるなんて思いもしないだろう。
ーすまない...禰豆子ー
実の妹の事を思うと、少し後ろめたくなる。
鬼になる以前に、Aさんへの本当の気持ちは禰豆子には一切話した事がない。おいそれと言えるような内容ではなかった。
あのまま家族が被害に遭わず皆健在で、一つ屋根の下暮らし続けていられたなら、彼女への恋情は意地でも自分の中にひた隠しにしていたのかもしれないと思った事さえある。
それまでの幸せは竈門家皆のもの、家族として既に調和が取れていた。それを壊したり掻き乱したりして、周りを巻き込む勇気はとても無かった。まさにAさんが前に言っていたことだ。
だが今となっては、俺と禰豆子とAさんだけが生き残り、妹の方はせいぜい幼子程度の思考力しかもたなくなってしまった。この点においては完全に俺の都合だけど、躊躇うしがらみが無くなった。
「禰豆子、お前を人に戻したら...したら全てを話すからな。だからそれまではごめん。こんな兄ちゃんを許してくれ」
全て
母さんと弟妹達はもうこの世にいない事。
あの吹雪の夜の出来事。禰豆子が鬼と成り果てた経緯。
俺達が刀を取り共に戦ってきた記憶。
仲間や尊敬する人達との出会い。
A姉さんへの想い、恋仲になった事実。
そしてそれらを禰豆子に伝えた時。自分とAさん二人共が生き残り、それから先の人生において、彼女の側に居る事が出来ると、守って行けると胸を張って言えた暁には..
ー【俺は彼女に結婚を申し込みたい】ー
例えAさんがどんな反応をしようと、どんな返事が返ってこようとも、男として彼女を生涯支えていきたいという俺の意志は変わらない。
変わらないんだ..。
ー「お前がAにいつしか簪を贈ったとしても、何も不思議に思わない。炭治郎、お前が1人の人間としてそう思ったのなら..止める事はしないし、それはきっと母さん達も同じだろう」ー
父さん...
あの時はああ言ってくれてありがとう。
今思えば、父さんには全部お見通しだったに違いない。あの言葉が無ければ俺は、今頃二の足を踏んでいただろうから。
「じゃあ、先に休んでていいからな禰豆子。」
妹の頭を一撫でして、炭治郎はすくりと立ち上がった。
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八千代(プロフ) - あいさん» リアルの日常とても辛い思いをされてるのですね..私の作品が少しでもあいさんの普段の楽しみになれたのならこんなに嬉しい事はありません。私こそ暖かいコメントに勇気とモチベを貰えました笑ありがとうございます! (2021年5月20日 22時) (レス) id: cc4d50fa77 (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - あいさん» コメントありがとうございます(*´-`)何度も読み返してくださってるなんて光栄です!亀更新で本当申し訳ないのですが、私も思い入れのある作品なんで、頑張って書きます!ありがとうございます!冨岡さんの夢は初挑戦ですが星詠み終わったら検討いたしますね(*^^*) (2021年5月20日 22時) (レス) id: cc4d50fa77 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 続き→冨岡さん落ちの夢小説も読んでみたいです!あくまで個人的な希望なので無理せず、ご検討よろしくお願いします!私は精神障害で親からの当たりも酷くて毎日死ぬほど辛い状況ですが、このお話を読んで少し元気をもらいました。ありがとうございます! (2021年5月20日 20時) (レス) id: b63ea41164 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - こんばんは!このお話とっても面白いですね!既に5回くらい読み返してます!そのくらい好きなお話です!更新を楽しみにしています!これからも、頑張ってください!応援しています!個人的な希望なのですが、このお話が終わったらでもいいので、八千代さんが書いた、 (2021年5月20日 20時) (レス) id: b63ea41164 (このIDを非表示/違反報告)
八千代(プロフ) - 花霞さん» 良かったです(^^)ありがとうございます!これからも頑張ります! (2020年12月7日 18時) (レス) id: 23228d6fd7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:八千代 | 作成日時:2020年8月30日 22時