◇ ページ38
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「ただいま〜」
「あっ、おかえりなさい!」
家を行き来するのが当たり前の関係になって、お互いの家の合鍵も持ってる。
「たくさんもらってきたね〜」
リビングに入るなりテーブルの上に置いた複数の紙袋の中を覗いて呑気に笑ってる。
高級ブランドの紙袋とかこの日のために作られたであろうデザインの包装を見たって何も思わないんだから、ここまで無頓着だと俺の方がお手上げだ。
「あっ、ねぇ!ここのチョコ!今年すごい人気あるんだよね!テレビで観たの!」
「あぁそう…」
「1つ食べてもいい?」
「ご自由にどうぞ」
自分の彼氏が他の女性からもらったバレンタインを嬉しそうに食べる姿に「なんで食えるかな」なんて心の中でツッコミを入れる。
「健永も食べる?」
「あぁ、うん」
「ご飯前だから少しだけね」
2人掛けの大きくないソファーに腰かけて、Aが見てたであろうテレビをただボーッと眺める。
その時、
「はい、どうぞ」と目の前のローテーブルに置かれたスクエアプレート。
「っ…??」
手を伸ばして気付いた。
「…これ、」
「ふふっ、何も用意してないとでも思った?」
見てわかる。
売り物とは全然違う、手作りのチョコレートブラウニー。
「味は負けちゃうけど、他のと気持ちが違うから!」
張り合ってるつもり?
いや、そうだとしたら素直に嬉しい。
「いただきます」
「どうぞ!」
震える手で周りの銀のホイルを剥がして、一口食べればカカオの程よい苦味と甘みが口の中に広がった。
「…んまい」
「本当に?気なら遣わないでよ?」
「いや、ほんとに。まじで美味い」
俺の言葉に「ふふふっ」って嬉しそうに微笑んでる。
そんな甘い表情を見たら心がきゅんっと掴まれて、一人の女性に恋に落ちるのって一回きりじゃないんだと気付かされた。
「まじで好きだわ」
「まだあるよ!食べる?」
「いや、そっちじゃなくて」
どこまでも鈍感な彼女には言葉だけじゃない、行動に移すのが一番なのかもしれない。
そう思って軽いキスを頬に落とすと見る見るうちに赤面していった。
こういうさ、純粋で素直でたまらなく可愛い姿を見てると、俺はきっとAという存在に何度も何度も恋に落ちるんだろうなって思うんだ。
Fin..
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作者名:珠美 | 作成日時:2021年11月22日 12時