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「さすがの今日は凄い人ですね〜」
クリスマス当日だから外は多くの人で賑わってる。
帰りのタクシーの中から外を眺めて、きらびやかなイルミネーションに目を輝かせるAちゃんが呟いた。
「ごめんね、降りてゆっくり見られなくて」
「全然!!私いつも歩いて見てますから!」
俺の方を振り向いて「お腹空きましたね」なんて楽しそうに笑う姿についつられて俺も微笑んだ。
「あ、ここで降ります!」
「…ここ?」
タクシーを停めて降りると周りを見渡して不思議そうな顔してるAちゃん。
それもそのはず。
周りにお店らしきものは見当たらない。
「ちょっと歩こう」
「え?」
「大丈夫。ここなら人いないから」
さっきのきらびやかな賑やかさとは打って変わって人通りも少なくて、それでも街路樹に飾られたイルミネーションが澄んだ空気の中で輝いてた。
「…きれい」
「うん」
Aちゃんの見つめる先を俺も見つめて、そっと無防備になってた左手を握りしめた。
「…っ、??」
「寒いでしょ?手冷えちゃうよ」
一瞬だけ驚いた顔して、ふふふってすぐに微笑んだ。
「歩こうって言ったの千賀さんですよ?」
…うん、ごもっとも。
「でもあったかい」
ぎゅっと握り返された俺の右手。
そのまま守るようにダウンコートポケットに引き込んだ。
「お店、行こっか」
「うん!」
「あぁ〜お腹空いた!」
「私もです!
そういえば千賀さんって何が好きなんですか?」
「俺?んーなんだろう。Aちゃんは?」
「焼き鳥のつくねです」
「あっ、そうだったね!!」
「知っててなんでまた笑うんですか…!」
「いや、ごめんごめん!!」
こんなさりげない会話さえ楽しくて。
頬をぷくーって膨らませながら拗ねてるAちゃんを見てたらもっともっと知りたくて。
握り返してくれたこの手が答えなんだと考えてる俺って単純すぎるかな?
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作者名:珠美 | 作成日時:2021年11月22日 12時