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撮影が終わって帰り支度をして、
「これから飯行く人ー!」
宏光の一声にメンバーが手を挙げる。
「…あれ?千賀は?」
「俺、今日予定あるんだわ」
俺の言葉にガヤさんだけがわかってるかのようにニヤニヤしてて、みんなが楽屋を出て行く流れで「まぁ頑張れよ」なんて俺の肩を軽く叩いた。
俺もみんなから少し遅れて楽屋を出ると、Aちゃんが待ってるであろうメイク室へと向かう。
同じフロアにあって大した距離でもないのに、どんな表情をしてどんな声をかけようかと緊張してる俺は、メイク室のドアの前で「ふぅー」と一呼吸整えた。
ーー…!
「っ、?!」
意を決してドアをノックしようとした瞬間、
「っ…!びっくりした!!!」
急に向こう側に開いたドア。
目の前には姿を見せたAちゃんの驚いた顔。
「…っ、お、お待たせ!」
「お、お疲れ様です…!」
すでにコートに身を包んでニット帽を被るAちゃんが目を大きく見開いて俺の少し視線を下げたところから見上げてる。
本当に待っててくれたんだという安心感と、これから2人っきりでご飯に行くことへの男としての頑張りと緊張感から鼓動が激しく高鳴る。
「じゃ、行こっか」
「はい」
「その帽子あったかそうだね」
「私、寒いの苦手なんですよ…
ほら!手袋もありますよ?」
コートのポケットから取り出されたミトンを俺の前に差し出されて思わず笑いが吹き出す。
「それ、子供がするやつじゃん!!」
「えっ?大人用ですよ?」
「いや、それはそうかもしれないけど…!」
今時手袋したままスマホをいじれる手袋とか売ってるのに。
ミトンタイプを使ってる子、久々に見たわ。
「千賀さんのマフラーも素敵ですね」
「あぁーこれね。
去年ガヤさんからもらったの!」
「へぇー!さすが藤ヶ谷さんセンスいい!」
目を輝かせて笑ってるAちゃんにまた抱く嫉妬心。
「Aちゃん、ガヤさんと仲いいの?」
「…え?」
「前から知り合いなんでしょ?」
表情を見るのも怖くてAちゃんの少し先を歩く俺はエレベーターの下行きのボタンを押して順番に光る上の数字を見つめた。
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作者名:珠美 | 作成日時:2021年11月22日 12時