◇ ページ25
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「あの…それって……」
「一応、デートのつもりだけど」
「っ、！！」
マンガみたいにわかりやすく、ボッと顔を赤くしたAちゃん。
「えっと…千賀さんと、ですよね？」
「ちょっと…待ってくださいね…」
何やら一人でぶつぶつ呟きながら俺に背を向けて、
「とりあえず、手洗ってきてもいいですか…？」
手のひらを俺に向けてきて、まだ若干残ってるワックスをわかりやすく見せつけた。
「うん、どうぞ」
「一旦、失礼します…」
あまりにも急に誘ったから混乱させちゃったかな？
でも遠回しに誘ったりなんかしたら、今まで同様に気付かずスルーされる可能性が高かったから。
「…あれ？健永？」
「おお！ガヤさん」
「え？なに？早くない？」
「うん、ちょっとね。今日だけ早く来た」
「……？Aは？」
リュックを下ろすと着てたダウンをハンガーにかけて、不思議そうに部屋を見回す。
…あ、ほら。また呼び捨てしてる。
ガヤさんだけはAちゃんのことを呼び捨てしてて、その理由もこの番組以前に仕事の付き合いがあったとかで。
でもプライベートなことは何も知らないなんて言ってるけど、本当はそれなりに仲良くしてるんじゃないかなんて勝手に勘ぐったりして一方的に嫉妬してる時もあった。
「さっきご飯誘ったら動揺して出てっちゃったよ」
「え？健永が？Aを？」
「うん」
「はあぁぁ…それは思い切ったねぇ…」
力なく笑ってるガヤさんが何を言いたいのかは何となくわかってた。
もしそんなことが外にバレれば干されるのはAちゃんの方だし、間違いなく仕事に支障が出るのは俺じゃない。
Aちゃんを想えばこそ、この気持ちは伝えない方が良かったのかもしれないけど。
指輪がなくなった途端、俺の気持ちがガマンできなくなってつい先走ってしまったんだ。
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作者名：珠美 | 作成日時：2021年11月22日 12時
