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待ちに待った翌週の収録日。
入りの時間よりも早く来てメイク室に入る。
「…あれ、千賀さん……」
「ごめん。時間早いんだけど…」
一瞬だけ部屋の時計に視線を向けた彼女が、
「そうですよね。私が時間間違えたかと思いました…！」
ってすぐに笑顔を見せて「どうぞ」って椅子を引いてくれた。
「前髪、切らなかったんですね！」
腰掛けた俺の首元にタオルを巻きながら鏡越しで笑いかける。
ふと視線を下げて、タオルの端と端をクリップで止める手元を見ると右手薬指の指輪が消えてた。
先週の地下駐車場での光景が頭に浮かんで、きっとあのまま仲直りしてないんだと不謹慎ながらも嬉しいような、Aちゃんの実際の心境はどうなんだろう…と複雑な感情が絡み合う。
「Aちゃんが前髪分けてる方がいいって言ってたから…」
「え？私が理由ですか？
そんな、責任重大じゃないですか！」
��Aちゃんの好みになりたくて��
なんて言葉を続ける勇気はなくて、「なんてね」って一緒に笑って誤魔化す。
「千賀さんは女の子の好きな髪型とかあるんですか？」
「俺？んー……
似合ってれば何でもいいけど。ショートが似合う子はグッと来るかなぁ」
「確かに女性にとってショートは勇気いりますもんね。
髪質とか顔の形とか、結構人を選ぶ髪型ですし……」
「でもそういうAちゃんもボブじゃん！」
ストレートに�爛椒屬了劼�好き�瓩箸呂気垢�に言えないからショートって言ってみたけど。
やっぱり当本人のAちゃんには伝わってないらしい。
「ボブとショートじゃ全然違いますもん！
私もともと癖毛なのでショートにしたら朝が大変なのでボブのパーマで誤魔化してるんです！」
「へえー！癖毛なんだ？知らなかった」
「ふふっ、今初めて言いましたもん」
収録の度に色々と話してきたつもりだった。
彼女のこと、それなりに知ってるつもりだった。
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そう笑う彼女の事を過去の男は知ってるわけで。
俺の中で沸々と湧き上がる嫉妬心と独占欲。
「ねぇ、今日の夜って空いてたりする？」
「えっ…？」
もっと知りたい。
もっと話したい。
ちょっとずつでもキミに近付きたいんだー…
俺にもそのチャンスが欲しくて、驚きで手を止めたAちゃんを鏡越しに見つめた。
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作者名：珠美 | 作成日時：2021年11月22日 12時
