◇ ページ12
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このまま帰るわけにはいかなくて、
“知り合いに会ったからタクシーで帰るわ”
マネージャーに連絡だけして女子トイレの前で待ち伏せ。
「……」
「っ…！！！やっ…なに、」
お手洗いから出てきた瞬間を見計らって、彼女の手を取りそのまま並列して歩く。
驚いた顔してその場で立ち止まろうとした彼女の手を引いたまま歩き続けると、「みっくん、ちょっと…！」って逆に腕を引かれて足を止められた。
「…やっぱり俺のこと覚えてたんだ」
久々に聞いたAからの�爐澆辰�ん�瓩辰童斥奸�
俺のことを軽く睨みつけるその視線すら愛しくて、色んな人がいるこの大きな会場じゃなければすぐにでも抱き締めたかった。
「…当たり前でしょ。忘れるわけない」
そう言ってすぐハッとした顔して俯いて、
「でも私たち会っちゃダメなんだよ…」って続けた。
「元気そうで良かった」
「……」
「顔見れて安心したよ」
�牴颪辰舛礇瀬瓩覆鵑世茘�
胸に突き刺さるAの小さな言葉を聞こえてないふりして明るく振る舞う俺。
そうでもしなきゃまたすぐに俺の前から消えてしまう気がしてー…
掴んだ腕は以前と変わらず細くて力を込めれば折れてしまいそうなほど頼りなくて、この10年間彼女がどんな時間を過ごしてきたのか俺にはわからないけどいい意味で何も変わってない。
「…みっくんも、元気そうで良かった」
「まぁな！この通りピンピンしてる！」
「仕事も順調みたいね」
やっと顔を上げたAが優しく微笑む。
俺の仕事のこと気にかけてくれてた？
俺がAを忘れられなかったように、Aも俺のことを考える瞬間があったのかな？
そんな都合良く考えられる俺ってまじで幸せもんだよな。
「みっくん、帰りじゃないの？」
「…あ、俺トイレ行きたかったんだ」
「えっ…？」
何言ってんの？って拍子抜けの顔してるA。
「ちょっと俺もトイレ行ってくるから」
「え？ちょっと…、」
「ここで待っててよ？いい？絶対だからね？」
「……」
返事はない。
だけど俺を見て呆れた顔して半分笑ってた。
その表情を見たらなんとなく安心して、言葉にしなくてもAは待っててくれると思えた。
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作者名：珠美 | 作成日時：2021年11月22日 12時
