＊ ページ49
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…ﾌﾞｰｯ…ﾌﾞｰｯ…
薄い意識の中で断続的に聞こえてきたバイブ音。
…ﾌﾞｰｯ…ﾌﾞｰｯ…
止んだと思ったらまた鳴ってる。
行為後の重い体を俺が起こす前に
「…もしもし…？」
すぐ隣でAちゃんが電話に出てる。
「…え？
あっ…ちょっと待って…」
薄っすら目を開けて見ると、床に落ちた服を拾い上げて急いで腕を通して部屋を出ていく。
スマホを耳と肩に挟みながら慌ててる様子にタダ事ではないことはすぐに悟れて、声をかけられる雰囲気でもなく俺も体を起こして服を拾い上げた。
「…うん、うん。
それで？大丈夫なの？」
いつもより低い声のトーンで深刻な顔してるAちゃん。
ベッドの際に腰掛けたまま、その姿を黙って見つめた。
「…うん。わかった。
来週会社に言って休みもらうから。また連絡するね？」
‥‥
‥‥
「……大丈夫？」
電話を切った後、スマホの画面を見つめたまま俯いてるAちゃんに恐る恐る声をかける。
「あっ…うん。
沖縄のおじいちゃんからだった」
「沖縄？」
「うちの母方の実家が沖縄なの」
「そうなんだ！
Aちゃんの実家は？」
「母親は私が中学生の時に病気で亡くなって、父親は会ったことないんだ…。
だから東京の大学に来るまで沖縄のおじいちゃんとおばあちゃんが親代わりだったの。」
「…あっ、そっか。ごめん……」
「全然。太輔くんが謝ることじゃないよ」
力なく、無理して笑ってる。
「…大丈夫？何かあった？」
「…ううん。大丈夫。」
なんだろう。
これ以上は踏み込めない。
これ以上は聞けない。
そんな見えない壁を作られた気がして……
この時はAちゃんの�狢臂翩廰瓩辰童斥佞鬚修里泙浣�呑みにするしかなかった。
もっと、ちゃんと、無理にでも、聞くべきだったと後悔することになるなんて、この時は思いもしなかった。
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作者名：珠美 | 作成日時：2021年9月15日 12時
