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あの女の人、私でもわかった。
テレビで何度か見たことある。
太輔くんの元カノって、あの人だったんだ。
あれから何度もしきりに鳴り響くスマホ。
手に取るたびに出ることがどうしてもできなくて、切れるまでただただボーッと画面を見つめた。
「‥‥‥」
画面に出る、太輔くんの名前に胸が苦しいほどに締め付けられる。
家に帰っても、仕事に行っても、ふとした時にエントランスで鉢合わせたあの2人の姿がフラッシュバックする。
2人が何を話してたかわからないけど、人目も気にせず腕組んで入ってきて、きっとあのまま太輔くんの家に入ろうとしてた。
現実的には見てないのに、2人が笑い合ったり、家でご飯を食べたり、ベッドで…なんて余計なことばかり想像しちゃって。
今さら戻れない、自分の気持ちに気付いて苦しくなってる。
あぁーやっぱり人を好きになるんじゃなかった。
巧見との出張で契約に至った書類の作成で、今週はずっと残業続きで…
こんな時でものうのうと有給消化してる巧見をぶん殴ってやりたかった。
コンビニで買った値引きシールの貼られたお弁当を提げて、マンションまで帰ってきた。
やっと今週も終わりだ。
出張からの一週間の残業。
土日は予定もないし、思う存分寝てやる。
エントランス手前の角を曲がろうとした時、
「……?」
人がいるはずのない垣根に腰かける男性が目に留まった。
こんなところで誰かと待ち合わせ?
梅雨も明けて夜もジメっとした蒸し暑さが残るのに、寒そうに体を縮めて俯いてる。
明らかに怪しい……
数日前からマンションの掲示板に貼りだされてた不審者の注意文書。
まさか、この人のこと……?
できる限り近くを通りたくなくて、細い歩道で極力距離を保ちつつ通りすぎた。
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作者名:珠美 | 作成日時:2021年9月15日 12時