春夏秋冬2 (ページ23)

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『ええー！そうかぁ。Aさん辞めちゃうのかぁ…』

「あっ、いや…！あの、辞めるんじゃ「ほんっっと寂しいっすよねー」

「っ、！！」

先方の担当者に辞める体で話が進められて、それに頷いてる巧見の反応に私だけが焦ってる。

「自分は同期として新たな門出を応援しようと思ってます」

『そうだねー。
Aさんは優秀だからどこでも活躍できると思うよ！』

「あっ、いや…あの、」

『そしたら最後の仕事ってことで、今回の案件もそちらにお願いしようかな』

「…えっ？」

「本当ですか？ありがとうございます！！！」

何この展開。

何この巧見の話術。

あっという間に大きな案件の契約完了で、居るだけの私はただただ巧見の適当加減に圧倒されてた。

私、辞めることになっちゃってるけど大丈夫…？

「良かったな、A！」

「え？…あ、うん…！」

満面の笑みで私の肩を叩く巧見の勢いに顔を歪めながらも必死に笑う私。

素敵な同期愛みたいな演出までしちゃって、これも実力だとしたら営業成績にも納得がいく。

「では、改めて正式な契約書はお送りいたします」

『はい、よろしくね』

これだけスムーズに契約が進めば部長もゴリ押しするわけだ。

担当先を一緒にもつことがあっても二人で回ることはほとんどなくて、巧見の仕事ぶりを目の当たりにしたのは初めてに近いかもしれない。

今回の案件は競合他社もたくさんいて正直厳しかった。

たぶん、私だけじゃここまで完結できなかったと思う。

「よし！ご飯でも行くか！」

「巧見…」

「さっき良い店教えてもらったから付き合えよ」

「ありがとう」

「へっ？」

訪問先の会社を出て、少し先を歩いてた巧見が驚いた顔して振り返る。

「なんでお礼言うんだよ。気持ち悪いな」

「なっ…！！」

「いいから行くぞ！俺腹減ってんだよ！」

ちょっとだけぶっきらぼうに言い放って、それが照れ隠しだとすぐにわかる辺りが巧見らしい。

仕事はできても、そういうところはツメが甘い。

入社からずっと一緒に居たからわかる。

巧見の表情も、気持ちも、考えてることもー…

だからこそ彼が誰を想ってるのかも、少しずつ受け入れていかないとー…

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