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ひょんな事から巧見と出張に行く羽目になって、しかも先方の都合により打ち合わせ時間的に日帰りでは無理になって、3連休前日ということもあって急遽とれたホテルはダブルベッドの一部屋だけで、こんな運に恵まれない日が来るなんてツイてないにも程がある。
…あぁー行きたくない。
諦めの悪い私が新幹線の窓側席で外を眺めてたら、「食う?」って隣からの声に視線だけを向ける。
「何それ?」
「クッキー。昼飯食えてないからって佐々木さんがくれた!」
「巧見に渡したんでしょ?自分で食べなよ」
佐々木さん
今年の新入社員で今はまだ部署決め前の研修中でうちの課にいる。巧見に憧れの視線を送る女性社員の一人。
「モテすぎるのも困るよな〜」
「それ、自分で言う?」
「まぁ、事実だし?」
「会社に婚約中ってこと言わなくていいの?
期待して待ってる子いるかもよ?」
「それってまだ選べるってことだろ?」
「……最低」
冗談だとしても巧見の発言には呆れる。
これを全部録音して夢見る女性たちに聞かせてやりたい。
「なぁ晩ご飯なんだけどさ、」
「私は行かない。コンビニとかでいいから」
「は?なんだよ、つまんねーな」
「これは旅行じゃないの。仕事だから巧見と来たの。勘違いしないでよ」
口を開けばイライラさせられるから、これ以上の会話はしたくなくてまた窓の方に顔を向ける。
いつもなら何かしら言い返してくる巧見は黙ったままで、わざわざ振り向いて顔色をうかがう勇気もない私はそのまま知らん顔する。
…さすがに言い過ぎたかな。
ちょっとだけ、胸がチクリと痛んだ。
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作者名:珠美 | 作成日時:2021年9月15日 12時