元彼_T ページ34
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家に着いてスマホを充電しようとポケットから取り出したタイミングで着信を知らせる。
画面を確認すると、表示された見覚えのある懐かしい名前に一瞬だけ心が跳ね上がった。
「…もしもし」
〈あ、裕太くん？久しぶり〉
「うん、久しぶり。どうしたの？」
この声も変わってない。
もうどれくらい経ったっけ__
Aと別れてからもなんとなく消せなかった連絡先。
今となってはやっぱり消さなくて良かったなんて勝手に思ってた。
〈廉くん、わかるよね？〉
「レン？永瀬のこと？」
〈うん。どんな子？〉
Aの口から出た後輩の名前に心臓がドクッと脈打った。
なんとなく嫌な予感がして、これ以上この話題を広げちゃいけない気がして、それでもスマホを耳から離せなかった。
「良い奴だよ」
〈それはわかってるよ。
そうじゃなくて、具体的に…ほら、〉
“それはわかってる”
Aの一言で予想は確信に変わった。
二人が知り合いなのは間違いない。
ああ、こんな展開を迎えるならAと付き合ってた時に紹介しとけば良かった。そしたら向こうだって手を出さなかっただろうし。
〈どういう子が好きとかさ、〉
「…俺あんまりそういう話はしないからな。
あぁーでも年下が好きって何かで聞いた気がする」
〈年下…〉
「あと背が低くて女の子らしい子って」
全部全部ウソ。本当は好きなタイプなんて知らない。
とりあえずAと真逆の人物像を思いつく限り伝えてみる。
〈…わかった。ありがとう〉
心の狭い俺にお礼なんて言わないでよ。
Aに女の子らしさはあっても、年下でも小柄でもない。
叶わない。そう、アイツとの恋愛なんて叶うはずない。
〈ユキちゃんに伝えとくね〉
「っ、え？」
〈私がメイクを担当してる女優さん。内緒だよ？〉
「ああ、うん、そりゃもちろん、言わない言わない！」
急に心が晴れたからトーンも高くなって早口になる。
なんだ、Aの話じゃなかった。
ユキちゃんが俺の頭に浮かんだあの女優なら年下で小柄だ。
でもそもそも今話した好きなタイプは俺のでっち上げだからその恋が叶う保証はないけど。
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作者名：珠美 | 作成日時：2023年4月18日 12時
