◇ ページ33
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「その大事な人がいつも笑ってることが俺の夢でもあるかな」
「…素敵な夢だね。
藤ヶ谷くんにそう想ってもらえる子が羨ましいよ」
正直、今の私には聞きたくない言葉だった。
恋人と破局を迎えそうな私と幸せ絶頂期の藤ヶ谷くん。
他人の惚気を聞く余裕なんてなかった。
「俺、その人の笑顔を見ると救われるんだよね。
まぁ彼氏いるから向こうは俺の気持ちなんて知ったこっちゃないだろうけど」
「え？彼氏いる人なの？」
「そう。まぁその彼氏がポンコツでさ。あ、人としては良い奴だよ？けど、その子の彼氏としてどうなのかなぁって。
あぁーなんで俺じゃないのかなぁ、俺なら一緒に夢語ってもっと幸せにしてあげられるのにっていつも思うわけ」
「そう、なんだ」
「だからさ、Aちゃんの夢をこれからも話してよ！
俺は聞きたいし、その夢にいつか俺も入れてほしいから！」
「…藤ヶ谷くん……、」
自惚れちゃいけない。
そう自分の中でブレーキをかけても、藤ヶ谷くんの強い想いと優しさに触れたら目頭が熱くなって涙が込み上げてきた。
「励ましのつもりが相手が弱ってる時に告るなんて俺ダサいよなぁ。ごめんごめん」
「ううん…」
これは何の涙なんだろう。
今の私には、まだよく分からなかった。
ただ一つだけ、ぼやっと見えてることがある。
それは、私の未来にカレはもういないということ。
否定されてばかりの毎日に疲れてしまった。
もし藤ヶ谷くんの言葉が情けや同情ではなく本気だとしたら、これから描く新しい夢の中で私の隣で笑ってくれるのは……、
「藤ヶ谷くん」
「ん？」
「ありがとね。ちゃんとケジメつけてくる」
「いいんだよ、焦らなくて」
「ううん、いいの。私ちゃんと考えるから。
これからのことも、藤ヶ谷くんのことも。
だから、待っててほしい…」
私の言葉に優しく微笑んだ藤ヶ谷くんがポンッと大きな手を私の頭に乗せる。
「もちろん、いくらでも待つよ。だって、」
「？？」
「夢は叶うまでの過程も楽しいでしょ？」
そう、夢は過程も楽しい。
それを誰かと共有できれば尚更のこと__
いつか気持ちの整理が出来たら、恋愛に前向きになれる時が来たら、自然と答えが出るんだろうなって思ったらこれからも夢を見続けたくて少しだけ未来が明るく見えた。
Fin...
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作者名：珠美 | 作成日時：2023年4月18日 12時
