◇ ページ32
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「…そっかぁ。それは随分な言い方されたね」
少し苦笑いしながらもカレのことをそれ以上は悪く言わない。
それが藤ヶ谷くんの優しさでもある。
「俺の夢かぁ…何だろうなぁ…」
うーん、と考え始めてしばらくの沈黙。
あまりにも真剣に考え込んでるから申し訳なくなって何か違う話題に変えようと思った時、
「あったわ、夢！」
今この瞬間に閃いたかのように嬉しそうに声を上げた。
「叶うかどうかは分からないんだけど、それでもあり？」
「うん、全然あり！例え叶わなかったとしてもそれまでの過程が楽しくて、私は結構無謀な夢とかも見ちゃったりするし！」
「あぁーわかる！ワクワクするよね！」
「そう！そうなの！！」
嬉しすぎる同調につい勢い余って声が大きくなると、あははっと藤ヶ谷くんが顔をくしゃっとして笑ってる。
「ご、ごめん…つい興奮して、」
「いや、全然！」
「でも藤ヶ谷くんは意外だったな。
真面目だからどちらかと言うと現実主義かと思ってたよ」
「もちろん現実を見つめるのも大事だけどさ、何か目標っていうか楽しみが無いとつまらないじゃん？」
「そうだよね！わかってくれて良かった…」
「でも夢ってさ、一人で叶えるのも楽しいけど誰かと一緒なら尚更いいよね」
「え？」
「Aちゃんの夢を叶えるのに、アイツにいてほしい？」
藤ヶ谷くんの目はあまりに真剣で、さっきまで笑ってた優しい感じとは全然違う。
急に真面目な顔をするから一瞬戸惑った。
「…そんなの、」
いてほしいに決まってる、だって彼氏だもん、って答えたいのに実際には言葉に出来ない。
だって、考えれば考えるほどカレと過ごす未来が見えなくなってたから。
「……今は、わからない」
カレからの否定的な言葉を思い出してつい泣きそうになる私を見て気を遣ってくれたのか藤ヶ谷くんが話し始めた。
「俺の仕事の夢にはメンバーがいる。
だけどもう一つの夢には大事な人がいる」
「大事な人、？？」
藤ヶ谷くんに彼女がいるかどうか私は知らない。
だけど恋人と描く夢がどれほど楽しいものかは私には分かる。
だって、それは私が何よりも望んでたことだから__
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作者名：珠美 | 作成日時：2023年4月18日 12時
