夢の続きは_F ページ31
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些細なことで恋人と喧嘩して、同棲している家を飛び出した。
最近はその頻度も増えたせいか追いかけてくる気配は全くない。
きっと彼の中でも私と同じ感情を抱いてるんだと思う。
“そろそろ潮時かな…”
だから唯一握り締めてきたスマホが鳴ることはないと思う。
私は昔から夢を見るのが好きで、いわゆる妄想族ってやつ。
それが叶うか叶わないかは正直どうでも良くて、夢を見て熱く語ることはタダだし、その夢を叶えるために努力することだって出来る。
ただ、真面目で現実主義のカレに言わせると、
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つまり私の夢や妄想に付き合わされるのが面倒臭くて厄介ってわけ。
それがカレの態度に顕著に現れるようになって喧嘩の回数も必然と増えていった。
「…Aちゃん？」
「……あっ、藤ヶ谷くん」
カレと同じ事務所の藤ヶ谷くん。
と言っても、カレは裏方で藤ヶ谷くんは表舞台の人。
マンションが近いこともあって何度かうちに遊びに来たり、近くのコンビニで偶然会うこともあった。
「あれ？今日は一人？」
「うん、まぁ…
藤ヶ谷くんは仕事の帰り？」
「そう。今日は遅いしコンビニでいいかなって」
手に持ったレジ袋を少し持ち上げて笑ってる。
仕事疲れを感じさせない爽やかな笑顔につられて微笑んだ。
「そうだ！ちょうど2本あるけど、どう？」
「え？」
「あぁー…でも連絡して呼ぶならもう1本買っとくか」
袋の中を覗き込みながら呟く藤ヶ谷くんに一瞬戸惑った。
「彼ね、今日は忙しいみたい…！」
「え？あ、そうなの？」
たぶん、藤ヶ谷くんは何かを察してるんだと思う。
カレとは仲が良いみたいでそれなりに私との事も聞いてるだろうし。
「何かあった？」
案の定、藤ヶ谷くんの家に向かう途中で私に歩幅を合わせながら優しいトーンで聞いてくる。
「ちょっと喧嘩しただけ」
「…そっか」
「藤ヶ谷くんって夢ある？」
「夢？」
いつかカレと海外旅行に…そう思って始めた500円玉貯金。
専用の大きな貯金箱も買って、意気揚々と見せたら鼻で笑われた。
もっと効率的にお金貯める方法あるでしょ、って。
私だってそんなことは分かってる。
だけど貯まるまでの過程も楽しみたいし、この方がワクワクすると思ったから。
そんなことを伝えれば、どうせすぐ飽きてくだらないもの買ってくるのがオチだよってバッサリ言い捨てられた。
…正直、もう限界だった。
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作者名：珠美 | 作成日時：2023年4月18日 12時
