本当の理由_T ページ28
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「なんで彼氏いること隠してんの？」
「だって職場の人に色々聞かれたら面倒だし…」
「…ふーん、別にいいけど」
同僚からの急な合コンの誘いに対してどうにか理由をつけて電話を切ると、その様子を見てた裕太くんが不服そうな顔して私を見てる。
半年前から付き合い始めて自分でもやっと実感が湧いてきた。
でも問題はやっぱり、裕太くんが彼氏だということは公に出来ないってこと。
別に自慢したいとかそんなつもりはこれっぽっちもないけど、いくつになっても恋愛話が好きな女子にとっては職場のお昼休みはいつも色恋沙汰で持ちきりだった。
裕太くんと付き合った当初は彼氏が出来たという事実だけを同僚には伝えていたけど、それ以降の話は濁してばかりだったせいで相手が既婚者だという噂だけが勝手に作られて流れていた。
そんな周りからの空気に耐え切れなくなって、彼氏とは別れたと嘘をついて過ごしてる今日この頃__
そのせいなのか、やたらと合コンやら会社のこじんまりした飲み会にも誘われるようになった。
「Aちゃんって今彼氏いないんだっけ？」
「…え？あ、はい、」
「じゃあ今度二人でご飯行こうよ！」
「え、？」
会社の飲み会が終わって、最寄り駅が隣だという先輩がわざわざ一つ手前の私の駅で降りて一緒に歩いて帰ることになった。
仕事が出来て、人当たりも良い。
飲み会ではいつも話の中心にいる先輩からの誘いに、穏便に済ませるために何て断ろうかと戸惑いながら首を傾げた。
「ずっとAちゃんのこと気になっててさ」
「いやいやいや、私なんてそんな、」
「美味しいもの食べに行こ？ね？」
キラッキラの瞳で見つめられて、無邪気ってこういう人のことを言うんだろうなぁなんて呑気に考えてたらギュッと急に手を掴まれた。
「っえ、！！」
「彼氏いないんでしょ？俺じゃダメ？」
パーソナルスペースを明らかに無視した距離の詰めように思わず顔を背ける。
まずい…これは本格的にヤバくなってきた…！
ただでさえ人通りの少ない道なのに時間も時間だから人の気配すら感じない。
彼氏がいます、なんて今更言えないし…どうしよう。
そんな時にカバンの中でタイミング良く震えたスマホ。
「っ、あ、あの！電話なので出ます…！」
そう言うと渋々解放してくれた手をカバンに突っ込んで手探りでスマホを探す。
切れちゃう前に、急げ…！
取り出したスマホの画面を見ると裕太くんからだった。
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作者名：珠美 | 作成日時：2023年4月18日 12時
