◇ ページ27
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「…彼女って言ったの？渡辺に」
《え？あ、いや…それは、なんか流れで、》
「まぁ俺も否定しなかったけど」
《え？》
「え？」
《そこは否定してよ！
俺のタイプはボインの長髪美女ですって！》
「勝手に人の好み決めないでもらえる？(笑)」
《…ど、どうする？》
「どうするって何が？」
《付き合ってないけど、私たち》
「んー、でもまぁ“嘘から出たまこと”って言葉もあるし」
急に迎えたチャンスとも言うべきタイミングに平常心を保とうとし過ぎて、説得力も何もないダサい言葉が出てしまった。
電話の向こうはもちろん無言で、さっきよりも何倍にも長く感じた。
《千ちゃんって、もっとスマートな告白する人だと思ってたよ》
「…俺もそのつもりだった」
なんか拍子抜け〜なんて笑うから俺も合わせて笑っとく。
一応、告白になってる？でもサラッと流された？
《まことにしてもいいってことか〜》
「え？」
《次直接会った時にもうちょっとスマートなバージョンでもらってもいい？》
「えっ、まじで言ってる？」
《期待して楽しみにしてる》
気心知れた女友達との関係が、あまりにも緩く自然に形を変えることになったけど、そんなかしこまってない方が俺ららしいのかもしれない。
《でもこれと言って私たち変わらなそうだよね〜》
「出来ることは増えるけど」
《…スケベオヤジ》
「いや、安心して。
俺全然半年でも一年でも待てるから」
《あ、言ったね》
「一年は嘘、
…いや、半年もキツいわ」
確かに気心知れて何でも話せる関係だから変わらないことの方が多いかもしれない。
それでもAは俺の彼女で、その隣を独占できるのは俺だけだと思えば嬉しくて顔が緩んで仕方なかった。
《次、会えるの楽しみにしてるね！》
そう言われて電話を切ると、いつもよりも心がくすぐったくなって仕事の疲れも忘れてむしろ目が冴えてしまった。
スマートな告白、、
弾き語りでもやってみようか。…いや、やめとこう。
なんて考えてるこの時間すら幸せで心地良かった。
Fin...
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作者名：珠美 | 作成日時：2023年4月18日 12時
