◇ ページ22
.
「藤ヶ谷くんは？最近どうなの？」
「そりゃもう絶好調よ」
「そういえばいつも私の相談ばかり聞いてもらってて藤ヶ谷くんの悩み事って聞いたことないかも」
「そうだっけ？」
「うん」
「…じゃあ一つ相談してもいい？」
「うん？どうしたの？」
流れ的にこの話はおしまいを迎えると思ってただけに、藤ヶ谷くんからの一言で反射的に姿勢を正した。
「俺の友達の話なんだけど、」
「藤ヶ谷くんの、お友達、？？」
「好きな子が自分のことをただの男友達としか思ってないらしくて、どうしたらそこを変えられるか悩んでるんだけど…」
「あぁ〜よくあるパターンね」
そこまで恋愛経験が豊富なわけでもないのに「分かるわ〜」なんて言いながら枝豆を咥える。
「それって女性的にはどうなの？」
「どうって？それはもうハッキリ言うべきでしょ！相手が気付いてないなら尚更、堂々と、好きって！」
「ハッキリ…堂々と…」
藤ヶ谷くんの呟きに“うんうん”と力強く何度も頷く。
「でもそれでいけなかったらって考えると、なかなか言えないらしいんだよね。ほら、今の関係が壊れたら…とか考えるわけじゃん？」
「まぁね〜、その気持ちはよく分かるわ」
「分かるんだ」
「うん」
「…なんで？」
「へ？」
藤ヶ谷くんから真っ直ぐ見つめられて口元まで運んだ枝豆を落としそうになる。
そのまま瞳の奥に吸い込まれそうになって、ドクッと激しく脈打った胸に違和感を感じながら咄嗟に逸らした。
「そ、そんなことはどうでもいいでしょ！
それよりそのお友達について考えよ、ね？」
どうしたんだろう、私。
藤ヶ谷くんの前でこんな動揺したこと今まで無かったのに。
「やっぱりAってちょっと騙されやすいっていうか、人を信じ過ぎるところあるよね」
「なに急に、なんで私の話になるの？！
今は藤ヶ谷くんのお友達の相談を解決しようとしてるのに、」
「ごめん嘘。今の、俺の話」
「…え？」
「言ってる意味、分かる？」
「…ごめん、全然分かんない」
「そのままの意味なんだけどなぁ」
「…えっと、その…うん、？」
頭が混乱してしまって言葉が出てこない。
さっきの動揺といい、何だか今日は上手く思考回路が機能してない。
そんな私に藤ヶ谷くんは半笑いしながらグラスのシャンパンをグッと飲み干した。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 94人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：珠美 | 作成日時：2023年4月18日 12時
