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あれから彼と会話らしい会話をしてない。
何時に帰ってくるとか、休日は友達とどこに行ってくるとか、そんな業務連絡的なことだけ。
また話をぶり返せば面倒な女だと思われるかもしれないし、結局彼には伝わらないと諦めてる自分がどこかにいた。
今日は珍しく夕飯を作らなくていいと言われて、俊哉の方から帰宅時間を聞かれた。
「…ただいま、！！」
「おかえり」
「え、なに、どこか行くの？」
玄関のドアを開けたらすぐ目の前で靴を履いてる彼と鉢合わせた。
「行こう」
「え？なに？私も？！
今帰ってきたばかりなんだけど、！」
「いいから！ね？」
訳も分からず俊哉に腕を引かれてそのまま来た道を戻る。
何かを思いついた子供のように急に突拍子もないことをするのは俊哉らしいと言えばそうかもしれない。
「どこ行くの？」
「ご飯」
「え？」
「だから、ご・は・ん！」
「いや、聞こえなかったわけじゃなくて！ご飯ってどこに？今日何か約束してたっけ？」
行く宛が決まってるのか数分歩いて出た大通りですぐに拾ったタクシーに乗せられる。
そんなに楽しみなのか、どこか嬉しそうに顔を緩めてる彼にこれ以上問いただすのは違う気がして私も黙ってついていくことにした。
「っ、？！」
「今だけ」
急に繋がれた左手に全神経が集中する。
手を繋いだなんていつぶりだろう。
もちろん初めてじゃないのにドキドキが止まらない。
「…ここ、」
「予約してあるから」
俊哉が精算してる間に窓越しに覗いた外には見覚えのあるお店が見えた。
タクシーから降りると「行こう」と肩を軽く抱くようにしてエスコートされる。
「覚えてる？」
「うん、もちろん、
だってここ俊哉が酔っ払って、」
「まぁ間違ってないけど(笑)」
俊哉と初めて二人でデートしたお店。
お酒の進みが早いからてっきり強い人のかと思いきや、帰りにはヘロヘロに力尽きた俊哉をどうにか家に連れて帰ったっけ。
初デートで男性を持ち帰るなんてもちろん未体験だった。
緊張しちゃってた、なんて後から照れ笑いしてたけど、あの頃から私は世話好きだったなぁ…なんて思い出して懐かしくなった。
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作者名：珠美 | 作成日時：2023年4月18日 12時
