◇ ページ15
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「…どうしたの？」
「え？あ、ううん、何でもない」
Aはすぐに顔を上げて俺を見て笑った。
「電話？」
「うん、友達から」
嘘だ。
そう口にしたくても実際に声には出なかった。
嘘をつかれていたのは俺の方だったなんて信じたくない。
今まで何があったって上手くやれてると思ってたのは俺だけだったなんて__
身勝手なのは分かってる。
罪悪感も被害者意識も、全部俺の独りよがりだってこと。
でも今、息が出来ないくらいめちゃくちゃに苦しい。
「そっか、友達か」
「うん」
しまおうとしてたハンカチなんかよりもスマホを一番にバッグの奥に押し込んで、Aは何事もなかったように立ち上がった。
汚れてしまったハンカチは濡れてるだろうに、どの荷物よりも最後にバッグを塞ぐように無造作に入れられた。
「じゃあ、そろそろ行くね」
立ち去ろうとするAの腕を咄嗟に掴んで引き寄せる。
よろめく体を背中から抱き締めて耳にキスを落とした。
「な、どうしたの、宏光」
「もう行くの？」
驚きながらも、くすぐったそうに体をよじるAの首元に顔を埋める。
唇を押し当てて、抱きしめる腕に力を込めた。
「うん、友達待たせちゃうし」
「まだ待ち合わせ時間まであるでしょ」
「でも、」
このまま誰に会いに行く？
俺に隠れて誰と何をしてる？
他人の彼女に早く会いたくてカフェで時間潰してる奴なんか、とことん待たせとけばいい。
それでも会いに行くなら、跡になるくらいのキスをして目印でもつけてやろうか。
�牴兇離皀劉瓩辰討修い弔吠�からせてやるために__
Fin...
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作者名：珠美 | 作成日時：2023年4月18日 12時
