お互い様_Ki ページ13
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「…ん？何か鳴ってない？」
そう言うAの視線の先を見ると、確かにテーブルに画面を伏せて置いてた俺のスマホが震えてた。
「取ろっか？」
「いや、届くから大丈夫」
なんとなく嫌な予感がして、ソファーに寝転んでた重たい体を素早く起こしてスマホを掴み取った。
…ほら、やっぱり。
画面に表示された名前を見て読みが当たったと変なラッキー感を抱く。
この間のちょっとした飲み会で知り合った、本気じゃない遊び相手。
「あぁ、マネージャーからだ」
「そっか」
「後でかけ直すわ」
Aは疑う素振りもなく、またテーブルの上の鏡に向かってメイク直しの続きを始めた。
何も聞かれていないのに先手を打っておく。
疑われる前に答えを出してしまえば嘘にはならない、というのは俺の勝手なルールだ。
その方が誰も傷つかなくて済むわけだし。
スマホをクッションの下に押し込んで、それを枕にまた横になると何も知らないAの背中を見つめて早くスマホの震えが止んでほしいとぼんやり考えていた。
なんでしつこくかけてくるかなぁ。
彼女がいるって俺言ったはずだよな。
出ないってことは、仕事中かデート中に決まってる。
彼女がいてもいいって言う割に図々しいにも程がある。
「っ、あ！！」
急に声を上げたA。
それと同時に硬い物同士がぶつかる音がして、俺からはAの後ろ姿しか見えなくて何が起こったのかは分からなかった。
「大丈夫？」
そう声をかければAがクルッと振り返って苦笑いしてる。
「ごめん、アイシャドウ落として割っちゃった」
パレットの蓋が外れて中身が粉々にテーブルの上に散らばってる。
「ラグには落ちてないけど、テーブルが…」
「あぁいいよ、全然。拭くもの持ってこようか？」
「大丈夫、ハンカチあるから」
Aはすぐ横に置いたバッグから手探りで薄いピンク色のハンカチを取り出した。
焦って探したせいで横倒しになったバッグの中からは、財布とスマホ、それに小さなポーチがはみ出してる。
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作者名：珠美 | 作成日時：2023年4月18日 12時
