◇ ページ50
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今日も仕事を終えて家に帰ると、玄関に見覚えのある靴が揃えられてることに気付く。
一瞬だけ心が踊って、すぐに冷静さを取り戻す。
「おかえり」
「た、ただいま…」
リビングに入るとAが真剣な顔で俺を見つめる。
「なんで私が来たか分かる？」
「……」
「どうして私のこと避けるの？」
「また連絡先聞かれたんだってね」
「教えてないけど」
「なんか、もうしんどいんだよね」
「…なにそれ」
「俺じゃなくてもいいでしょ」
俺の彼女はモテる。
それを目の当たりにするたびに俺はどんどん自信がなくなっていく。
付き合ってくれたのだって、俺が一方的に好きになって必死に押し続けたからだし。
「私と健永の気持ちは？」
「え？」
「なんで私たちの恋愛に第三者が入ってくるの？
健永は私の気持ちなんて関係ないってこと？」
「Aだって俺よりもかっこよくて、女心わかってて、もっと金持ちで成功してる人の方がいいでしょ？」
「…何なの、それ。
本気でそんなこと思って言ってる？」
「自信ないんだって！
始まりだって俺が一方的に好きになったんだから」
「私の方が先だけど」
「え？」
「私ずっと健永のファンだったもん」
嘘だ。そんなの初耳だし。
「この業界に入ったのもいつか健永と会いたかったから」
「…まじで言ってる？」
「私だって不安だよ。
健永がこの先も私のこと好きでいてくれるのか…」
天真爛漫でいつも明るく前向きな彼女が見せた弱い一面に俺の独占欲が余計に強くなる。
「俺でいいの？」
「健永がいいの」
「A、」
「だから避けたりしないでよ」
そう言いながら目を潤ませる彼女を抱き寄せた。
「ごめん、俺が悪かった」
「…うん」
「なんで俺のファンだったこと隠してたの？」
「嫌がられるかなって」
「そんなわけないじゃん」
「好きって言われたのが嬉しくて、絶対に健永から離れたくなくて、余計に言えなくなっちゃった」
それを最初から知ってたら、、
俺はきっともっと胸張ってAの彼氏でいられたかもしれない。
「じゃあさ、」
「？？」
「今度誰かに言い寄られたら、俺のファンだって言ってよ」
「…健永の？いいの？」
「熱烈なファンです、って」
ふふって笑った彼女が恥ずかしそうに俺を見る。
「わかった、ちゃんと言うね！」
それでもきっと俺の彼女はモテる。
だけど俺の彼女は、俺だけの__
Fin...
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作者名：珠美 | 作成日時：2023年1月27日 9時
