◇ ページ44
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勢いで頭と体を洗って浴槽に浸かる。
温めが好きな高嗣が熱めが好きな私のためにお湯を温め直してくれた。
それだけで高嗣からの愛情は十分伝わってるのに今日は素直になれない。
体を温めながら少しずつ冷静になりつつある頭で色々考えているうちにお風呂から出るタイミングを逃してしまった。
というか、気まずくて高嗣と顔を合わせたくないのが本音。
寝てていいよって言ったけど、高嗣のことだから絶対起きてる。
「ああもう、私ってば…」
さっき勢いのまま口にしてしまった言葉たちを今になって後悔してる。
浴槽から重い体を上げて用意したバスタオルに手を伸ばす。
そのまま足を拭こうと体を屈めたら頭がボーッとしてきて視界がチカチカと眩しくなり始めた。
…あ、やば、い、かも、、
「A！？」
気付けば床に力無く座り込んでて、まだ拭き終えてない濡れてる私を抱えてる高嗣の顔が見えた。
「ごめん…逆上せた、かも、」
「本当に？大丈夫？どこか打ってない？」
「あ、うん、だいじょ…っわ、」
ヒョイッと裸の私を抱えて涼しいリビングまで運ばれてソファーに下ろされる。
バスタオルに巻かれて大人しく横たわった私は、慌ただしくキッチンやら洗面所やら動き回ってる高嗣を見つめる。
「水飲めそう？」
「うん」
「このタオルで頭冷やして」
「あ、ありがと」
「そうだ、服だ服、今持ってくる」
「ごめんね」
…そうだった。
高嗣はいつだって私のために、、
「え、どうしたの？！どっか痛い？」
いつの間にか溢れ出てた涙。
目の前には心配そうに私を見つめる高嗣がいる。
「…ごめん、」
「え？」
「高嗣に酷いこと言って、私、」
そう言いかけてたら、ぎゅっと握られた手。
「いや、悪いのは俺だよ。
勝手に不安になって機嫌悪くしてAに当たってた」
「…ううん」
「Aが仕事で大変なの分かってるのに、本当ごめん」
「私も疲れてるからって高嗣に強く当たっちゃった」
頬を伝う涙を優しく拭ってくれた高嗣の手は温かくて、どれほど愛おしいか改めて気付かされた。
好きだからこそ嫉妬もするし、信頼してるからこそ言い過ぎてしまうこともある。
「私は高嗣のことが好きだよ」
「俺だってAだけだよ」
「嫉妬も、程々にね」
「…はは、ごめん」
今日も明日も明後日も、一途に愛してるから__
今日涙した分、明日たくさん笑えるといいな。
Fin...
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作者名：珠美 | 作成日時：2023年1月27日 9時
