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トイレから戻ると個室の外にも声が漏れるくらい会話が盛り上がってるのが聞こえてきた。
席に戻ると、交代するかのように「俺もトイレ」と宮田も席を立つ。
Aちゃんと二人きりになると、さっきまでの盛り上がりは嘘のように沈黙が流れた。
「…なんか二人いい感じだね」
空気が少し苦しくなって、思わずあからさまに宮田とくっつけるような事を口走る俺。
合コン初心者みたいな盛り上げ方に自分自身で失笑する。
「え、そうですか？」
Aちゃんも困惑したような顔するからなんとなく盛り下げてしまったような気がした。
あぁー余計なこと言ったな、って思ってたら…
「私は千ちゃんと仲良くなりたいんですけど」
とクリンッとした目で俺を見た。
…え？
「お、おれ？」
「はい、おれ、です」
Aちゃんは俺をじっと見て少し恥ずかしそうに笑う。
まん丸の綺麗な瞳に吸い込まれそう。
「千ちゃんは覚えてないと思うんですけど、先月編集部の保管庫に閉じ込められた私を助けてくれましたよね？」
「え？…ああ！あの時の？！」
廊下を歩いてたら断続的に何かを叩く物凄い音がして、近くにいたスタッフを呼んで確認したら真っ暗な部屋から女の子が確かに出てきた。
どのくらいの時間そこにいたのか分からないけど、憔悴してたから買ったばかりの水を渡したっけ。
「あの時の千ちゃんが王子様に見えて、それですっかり好きになってしまって…」
「王子ってそんな…」
「もう一度どうしても会いたくてヒメちゃんがとしやんに声かけて協力してくれたんです」
としやんって誰だっけ、あぁ宮田か。
…なんてまさかのAちゃんかの言葉にどうでもいい事を考える。
じゃあ、しつこくこの飲み会に宮田が誘ったのって＿
「本当に、俺なんかでいいの？」
「千ちゃんがいいんです！」
「うわ、まじか、どうしよ、めっちゃ嬉しい」
年甲斐もなく照れる俺を見てAちゃんがまた可愛らしく笑った。
◇
◇
「なぁ俺とAちゃんをくっつける割に宮田グイグイいってなかった？」
後日、宮田に聞いてみる。
「だってAちゃん可愛いんだもん、としやんって♡」
「アホ」
付き合った報告がてら三人でご飯でも、なんてちょっと不安で出来ないけど。
もし結婚なんかできたら代表のスピーチくらいはさせてあげてもいいかな。
…なんて浮き足立ってる俺はこれからの二人の楽しい未来しか想像してない。
Fin...
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作者名：珠美 | 作成日時：2023年1月27日 9時
